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新人教員の12か月+ 今月なにする? こんなときどうする?

授業のコツと学生に関する悩みの解決

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  • 2026/07/27 掲載
大村ゆかり
大村ゆかり
著者紹介
大村ゆかり
愛知県看護協会教育センター

 

 

1.緊張してもどうにか授業ができるようにするための、事前の準備

 

 初めての授業を任されるときは、誰しも本当に心配なものです。 念入りに授業案(指導案)を作成し、万全の準備をしたつもりでも、「授業は生き物」と言われるくらいですから、「学生からどんな反応が返ってくるだろう」「計画通りに進むだろうか」と不安になるのは当然のことだと思います。

 私自身、教員になりたての頃は、自分が立てた計画で本当に授業が成立するのか、あるいは学生に質問を投げかけてから答えが返ってくるまでの「間の時間」をどう予測すればよいのか、まったくわかりませんでした。「どうしてこの時間配分でできると思ってしまったのだろう……」と、授業後に頭を悩ませたことを今でもよく覚えています。

 先輩の先生方のなかには、「前日に自宅で、本番通りに90分間の模擬授業をすべて通して行う」という徹底した準備をされる方もいらっしゃいました。確かに、頭のなかでは「話せる」と思っていても、当日の場の雰囲気や予期せぬ学生の反応を想像すると、心配で眠れない夜を過ごす気持ちは本当によくわかります。

 

自分の「緊張のタイプ」に合わせて準備する

 緊張に負けずに授業を乗り切るためには、自宅で何度も声に出して模擬授業を繰り返したり、場に慣れるために先輩教員に聞いてもらったりするなど、さまざまな方法があります。

 ここで大切なのは、「自分はどのような場面で緊張しやすいのか」という特徴(タイプ)を知り、それに合わせた準備をすることです。

・「人前に立つこと自体に苦手意識がある」のか

・「緊張すると頭のなかが真っ白になってしまう」のか

・「学生の反応が少しでも悪いと焦ってしまう」のか

 ご自身のタイプに合わせて、対策を考えてみましょう。 セリフを丸暗記するくらい徹底的に反復練習する方が安心できるタイプもいれば、大まかな流れだけを決めて口慣らしをしておくほうが臨機応変に対応できるタイプもいます。また、学生の視線が気になるなら、「自分の看護に対する思いを学生に伝えるいいチャンスだ」と心のもち方を変えるのも1つの手です。まずはこれまでの人生経験を振り返り、自分に合う方法を探ってみるのがよいと思います。

 

 授業案への「お守りメモ」と、柔軟な誘導のコツ

 私は、自分が用意した授業案に対して「想定外のことが起きたときの対応策」を考え、授業案の余白にメモ(お守りのようなもの)をして臨んでいました。

 最初は「この反応が来たら、こう返す」と細かく決めていたのですが、学生の反応はまさに十人十色です。あらゆる反応に対して個別に答えを用意しようとすると、かえってがんじがらめになり、うまくいきません。

 そこで、1つひとつの対応を考えるのではなく、「最終的にこの内容(ゴール)を伝えられればOK」とシンプルに軸を決めることにしました。もし自分が思っていたような反応が学生から返ってこなかったとしても、

 「今、〜という意見をいただきましたが、実は私はこう考えていて……」

と受け止め、そこから本来伝えたかった方向へ自分で誘導していけばよいのです。そう思えるようになってからは、授業中の心のゆとりが少しずつ生まれるようになりました。

 

 

2.やることが多い授業準備、みんなどうしてる?

 

 初めて担当する科目の授業準備は、どれだけ効率化を意識しても勤務時間内だけでは収まらないのがリアルな現実です。多くの先輩教員も、自宅に仕事を持ち帰り、時間外に机に向かって準備しています。 本当に大変な作業ですが、「学生に理解してもらえる授業にしたい」という想いが、不思議と「やるしかない」という原動力につながっていきます。

 ただし、この生みの苦しみがあるのは「最初の1回目(1年目)」だけです。2年目からは、今年作った授業案や資料をベースにブラッシュアップしていけるため、準備はぐっと楽になります。未来の自分を楽にしてあげるためにも、まずはこの1年目を乗り切りましょう。ただし、学校の状況においては新しい科目になることもあります。そのときは前任者の講義資料を見せてもらうとよいでしょう。

 すべてを完璧にやろうとせず、まずは以下の「授業準備のスモールステップ」を1つずつチェックしながら進めてみましょう。

 

◆授業準備を乗り切るためのステップ・チェックリスト

【ステップ1】まずは全体像と中身を知る(情報収集)

・必要な書籍や文献に目を通したか?

・科目全体の流れ(シラバスや全体の構成)がつかめているか?

【ステップ2】教える内容を絞り込む(骨組みづくり)

・単元ごとに、絶対に外せない「押さえるべきポイント」を整理したか?

・1コマ(90分)のなかで、「何を教えて、何を教えないか(取捨選択)」が決まったか?

・教科書をただ要約しただけになっていないか?(学生を引きつける要素があるか)

【ステップ3】自分に合ったスタイルで仕上げる(資料作成・時間管理)

・「骨組み」をつくったうえで、実際の配布資料やスライド作成に移れているか?

・自分の性格や生活リズムに合わせた時間の使い方ができているか?

  ※「まとめて派」なら:平日の夜や休日に集中する時間を確保する。

  ※「平日コツコツ派(土日は休みたい派)」なら:早めから取り組んで、平日の夜などに1〜2時間ずつ計画的に進め、夜更かしを避ける。

・学生が演習や課題に取り組んでいる「静かな90分間」など、勤務時間内で講義資料の作成時間をあらかじめ確保しておくとよいでしょう。たとえば、「2限は講義資料を作成する」などのようにです。

 

 

3.学生に伝えたいことをうまく伝えるコツ

 

「45分も話したのに、聞いていない」のはなぜ?

 私は基礎領域の実習担当だった頃、実習前のオリエンテーションを任されたことがありました。実習内容や準備、当日の持ち物などを細かく丁寧に説明したつもりでした。しかし、実習が始まると、他の教員から「学生が持ち物について説明を聞いていないと言っている」「知らないと話していた」と耳にしたのです。 「45分も時間を取って話したのに、聞いていないなんてどういうこと?」――当時はそう憤り、焦りました。「学生に説明しても聞いていないから、何度も繰り返し言わなくちゃ」「後で『説明されていない』と他の教員に責められないようにしなくちゃ」と、強迫観念のように自分を追い詰めていたのを覚えています。

 

臨床での「新人指導」に隠されていたヒント

 でもあるとき、「本当に学生は『聞いていない』のだろうか?」と疑問が湧きました。そこで思い出したのが、臨床で働いていた頃の新人指導の経験です。 インシデントを起こした新人とリフレクション(振り返り)をした際、「大事なことだから」と強い口調で指導したことがありました。改善点を考えてほしかったのに、新人は貝のように口を閉ざし、不満げな顔をするだけ。そのとき気づいたのです。「伝えたい」と思えば思うほど、言葉に感情が乗ってしまい、相手には内容ではなく「感情(怒りや圧迫感)」だけが伝わってしまっていたのだと。それ以来、患者の急変時であっても、あえて聞き取りやすい声のトーンと落ち着いた口調で話すよう意識を変えました。

 学生への伝達もまったく同じではないでしょうか。一所懸命になりすぎるあまり、学生側には内容よりも「先生がなんか怒っているな」「怖いな」という印象しか残っていないのかもしれません。

 

相手の脳のシャッターを開ける「聴く準備」 

 ただ伝えたいことを一方的に話すだけでは、相手には届きません。大切なのは、「話を聴く側の準備(脳の受け入れ態勢)を整えてから伝える」ことです。 前振りもなく突然話を始めると、聴く側の準備ができておらず、「先生が何か話し始めたぞ、何の話だろう……」と頭のなかで考えているうちに、最初の重要な部分を聴き逃してしまいます。また、人は途中でわからない言葉(キーワード)を耳にすると、「それってどういう意味だろう?」と別の思考に囚われ、その後の話を聴けなくなります。

 私は、この現象を勝手に「まだら聴き」と名づけています。「まだら」は学生の不真面目さゆえではなく、「人間の特性」なのです。そうとらえれば、私たち教員がやるべき対策が見えてきます。

 

◆「まだら聴き」をなくす! 伝えるための3つのポイント

 この「まだら聴き」を防ぎ、学生に確実に伝えるためのコツは、授業や演習、事務連絡など、あらゆる場面で活用できます。

・「前振り」をして、聴く準備を整える

 突然本題に入らず、「今から、実習で絶対に必要になる持ち物の話をします」とテーマを宣言し、学生の意識をこちらに向けさせます(脳のシャッターを開ける)。

・難しい言葉(キーワード)はその都度確認し、共通理解を図る

 専門用語やわかりにくい言葉が出たときは、「〇〇って、どういうことかわかりますか?」と確認をはさみます。言葉の引っかかりをなくすことで、その後の「まだら聴き」を防ぎます。

・説明の後に「ペア」で確認させ、齟齬をなくす

 一通り説明した後に、1〜2分取って「今、私が話した『持ち物』は何か、隣の人と確認し合ってみてください」とペアワークをはさみます。アウトプットさせることで、聞き逃しや勘違いを全員でカバーし合え、伝達漏れがゼロに近づきます。

 

 

4.寝る、スマホばかり見る、私語が多い、トイレから戻らない……

  ――学生の「困った態度」にどう対応する?

 

湧き上がる怒りや悲しみの正体 

 授業中、あからさまに興味なさそうな態度をとられると、教員としては悲しいやら腹立たしいやら、複雑な気持ちになると思います。 なぜこれほど強い感情が湧くのでしょうか。他の教員の様子を見ていても感じるのは、そこには「教員として馬鹿にされた」という悔しさや、「これだけ時間をかけて準備したのに、なぜ聴いてくれないのか」というやり切れなさがあるからではないでしょうか。一所懸命であればあるほど、裏切られたような気持ちになるのは、人としてごく自然な感情です。

 

視点を「困った学生」から「真面目な学生」へ切り替える 

 しかし、ここで一歩引いて、教室全体を俯瞰してみましょう。 仮に40名の学生がいるとします。そのうち、誰が見ても不真面目な態度をとっている学生は、多くても数名、時にはたった1名ではないでしょうか。 教員の意識がその1名に集中して授業がギスギスしてしまうと、残りの39名の学生はどう感じるでしょうか。教員の怒りのオーラに怯えたり、授業が中断して不快な思いをしたりすることになります。真面目に授業を聴きたい、学びたいと思っている大多数の学生の気持ちを無視するわけにはいきません。教員には、目の前の「1名」に惑わされず、「残りの39名のために、いかに平静を保って質の高い授業を続けていくか」という視点が求められます。

 

◆授業の空気を乱させないための対応ポイント 

 授業時間内にその学生の行動を看過できないと感じた場合は、全体の学びを阻害しないための「スマートな注意のコツ」を実践してみましょう。怒りや悲しさを感じたまま注意しないように気をつけてみます。

・全体への注意をしなければならないとき

 教室全体に向けて「静かにしなさい」と説教を始めると、真面目に聴いている学生の時間を奪うことになります。全体への注意が必要な場合でも、感情を交えず、事務的に短時間で終わらせて授業に戻りましょう。長く繰り返し注意したとしても効果はありません。

・ワーク中などの「隙間時間」に個別で注意する

 授業を中断して全体の前で叱責すると、学生が反発して頑なになったり、教室の空気が険悪になったりします。学生たちがグループワークや個人ワークに取り組んでいる最中を見計らい、その学生の席へ行って個別で静かに注意する(声をかける)のがもっとも効果的です。

・授業中に学生が退出したまま戻って来ない

 授業中に戻ってこない学生をその場で追いかけるのは困難です。授業中は「今いる学生」に集中し、戻らなかった事実だけを記録しておいて、授業後や後日に個別で理由を確認し、指導する形をとりましょう。トイレでの離席については、体調不良の可能性も念頭に置き、必要に応じて様子を見に行くなどの対応が求められます。そのため、学生が退出する際にあらかじめ「気分は悪くないか」と一言確認しておくことで、教員側も余計な心配をすることなく、その後の適切な対応(安全確認)へスムーズにつなげられると考えます。

 学生が授業に集中できるような仕組みづくりは極めて大切ですが、初年度は誰もがどう対処すればいいかと頭を悩ませるものです。ときには「学生としてその態度はどうなのだろう」と疑問に思う場面に直面することもあるかもしれません。しかし、一歩引いて少し心に距離を置いて向き合うことで、自分自身のことも、学生の姿も、より客観的にとらえられるようになるはずです。

 

 

5.試験問題を作成するときのポイント

  ――「正しく評価し、スムーズに採点する」ための鉄則

 

 試験問題の作成は、教員にとって一大イベントです。せっかく時間をかけてつくっても、問い方が曖昧だと「学生によって解釈が広がりすぎて採点基準がブレる」「想定外の回答への部分点対応に追われる」といった事態になり、採点業務が何倍も大変になってしまいます。選択問題で解答がぶれることはありませんが、記述式問題は要注意です。

 確実で公平な試験にするために、以下のルールやガイドラインを意識して作成しましょう。

 

記述式問題の作成ルール:採点基準の標準化

 記述式は「答えの範囲」を限定し、採点しやすくすることが重要です。 看護の課題は正解の幅が広いため、「~について考えを述べよ」といった抽象的な問い方をすると回答が乱立し、公平な採点が不可能になります。

 

問い方の基本構成

 問題文には、以下の3つの要素を必ず組み込みます。

・事例(状況設定):患者や家族の具体的な状況

・評価したい視点の指定(何を):身体面、心理面、家族の視点、安全管理の視点など

・条件の指定(枠組み):〇点挙げよ、〇字以内で説明せよ

 

・事例を用いた問い方による違いに注意する

【状況設定】

 Aさん(75歳、男性)。脳梗塞の急性期を過ぎ、右半身に軽い麻痺が残るが明日退院予定。「自宅で大好きな庭いじりをしたい」と言うAさんに対し、同居する長女は「また転んだら危ないから家の中でじっとしていてほしい」と不安を訴えている。

・悪い問い方(採点不可)

 「このときの看護師の対応について、あなたの考えを述べよ」

※理由:声かけ、家族ケア、環境調整など回答の方向性がバラバラになり、採点基準がつくれません。

良い問い方(視点と数を指定)

 「Aさんが安全に希望の生活を送るために、退院前に【長女の介護負担や心理的側面】の視点から、看護師が確認すべき点を2点挙げよ

・良い問い方(理由と文字数を指定)

 「看護師が長女に対し、庭いじりの継続を勧める理由を、【廃用症候群の予防】の視点から30字以内で説明せよ

ポイント:回答する視点や条件(字数・回答数・対象・理由など)を明確に指定し、回答の範囲を適切に限定します。

効果:回答のばらつきが少なくなり、採点基準(ルーブリック)を明確に設定できます。その結果、公平性が高まり、採点時間の短縮にもつながります。

・問いの表現を厳密にし、誤解の余地をなくす

ポイント: 主語や目的語を明確にし、学生が問題文だけで意図を理解できるよう表現にします。教員の「言わんとしていること(文脈)」を読まないと解けないような曖昧な表現を排除します。

効果: 「問題の意味がわからなかった」という学生からの不服申し立てや、問題自体の不備(全員正解措置など)を防ぎます。

・問題をつくるときに、必ず「模範解答と採点基準」を同時につくる

ポイント: 問題文が完成した段階で、時間を置いてから、実際に自分で解いてみて模範解答(キーワードや加点・減点基準)を作成します。さらに、可能であれば同僚教員にもといてもらい、解釈のずれがないか確認します。

効果: 自分で解いてみることで、「この問い方だと、別の意味にも取れてしまうな」という問題の欠陥に、印刷前に気づくことができます。

 

 初めて試験をつくる際は、「同じ領域の先輩教員に、作成した問題を一度解いてもらう(あるいは読んでもらう)」のがいいでしょう。自分では完璧に伝わっているつもりでも、他者の目で見ることで「この表現は学生が迷うかも」というポイントが見つかりやすいものです。未来の採点時間を減らすためにも、問題文の「推敲」に少しだけ時間を割いてみてくださいね。

 

厚生労働省「看護師国家試験出題基準」

 

 大学教育や医療系国家試験の作成基準において、以下のようなガイドラインが公式に示されています。客観式・多肢選択式で作成する際には、以下の点に注意が必要です。

・客観式試験の原則

 看護教育においてベースとなる国家試験の作成基準(客観式・多肢選択式)では、以下の不適切例を避けるよう明記されています。

・「もっとも適切なものはどれか」という問いにおける曖昧さの排除: 選択肢のなかに「100%誤りとは言えないが、正解ほど適切ではない」というようなグレーゾーンをつくらず、正解の根拠が明白であること。

・否定表現(「適切でないものはどれか」)の乱用防止: 学生がパニックになりやすいため、否定表現を用いる場合はアンダーラインを引くなどして誤解を防ぐ。

 

 

6.学生のやる気スイッチをオンにしたい!

  ――「私たちの当たり前」は、本当に当たり前?

 

「看護師になりたいんだから、やって当たり前」という罠

 「看護師になりたくて進学したんだから、勉強するのは当たり前」

教員間で、このような言葉を耳にすることはありませんか?「プロを目指すのだから努力するのは当たり前」「出された課題や宿題をやるのは当たり前」「実習中に記録を書くのは当たり前」――私たちはつい、自分たちの基準を「当たり前」として学生に求めてしまいがちです。

 しかし、課題をやってこない学生を見て「あの学生はやる気がない」と決めつけてしまうと、その否定的なニュアンスは教員の態度を通じて、自然と学生に伝わってしまいます。これでは学生のやる気に繋がるはずがありません。なかには「先生の評価」を気にして、怒られたくない一心で慌てて課題をこなす学生もいますが、恐怖や義務感から行動している状態では、看護の本質を深く学んでもらうことは難しいのではないでしょうか。

 

「同じ熱量」を求めていないか? 自分の鏡としての学生

 教員が一所懸命やればやるほど、それと同じ熱量を学生にもついつい求めてしまいがちです。しかし、もし「なぜ学生がやる気を見せないのだろう?」と悩んだときは、学生を責めるのではなく、まずは自分自身の発言や態度を見直す必要があります。

 人間は毎日同じモチベーションでいられるわけではありません。やる気は毎日、100%の状態で維持されている必要はないのです。だからこそ教員に必要なのは、学生がそのときその瞬間に「今、これをちょっとやってみようかな」と思えるような、小さな「動機づけのテクニック」です。そしてそれ以上に、「教員側が、自分の熱量を押しつけて学生のやる気を削いでいないか」に気を配ることが極めて重要になります。

 

◆学生の「やる気を削がない・引き出す」ためのかかわり方ポイント

 ただ「〇〇しなさい」と言葉で指示を出すだけでは、学生の心は動きません。「あんな言い方をされて感じが悪い」と受け止められてしまえば、どれだけ正論であっても意味がなくなってしまいます。以下のポイントを意識してみましょう。

・「やってこない=やる気がない」の決めつけをなくす

ポイント: 課題や記録が滞っている背景には、やり方がわからない、体調が悪い、生活リズムが崩れているなど、さまざまな理由が隠れています。まずは「やる気がない」とレッテルを貼らず、フラットな視点で学生を観察します。

・伝えるときの「言葉」だけでなく「態度(非言語)」にも気を配る

ポイント: 正しい指導であっても、表情が硬かったり、ため息混じりだったりすると、学生には「怒られた」「感じが悪い」という感情(ネガティブな印象)しか残りません。学生のやる気を削がないよう、声をかける際のトーンや表情に配慮します。

・「褒める・認める」ことで小さな動機づけをつくる

ポイント: 「よくここまで調べてきたね」「この前のケア、患者さんが喜んでいたよ」など、教員からの肯定的なフィードバックは、学生が「次もやってみよう」と思える最も身近なやる気スイッチになります。できたこと、工夫した行動を言葉にして認めていきましょう。

 

 

コラム 発問は難しい

 

 

 授業の準備や実習指導等、周りが見えてくると同時に、どんどんやることも増えてきていると思います。最初は授業も台本(?)通りに伝えるだけで精一杯で、学生の反応を見ることもできなかった、という方もいると思いますが、徐々に学生に目を向けながら授業をすることができるようになってきたのではないですか? 日々の業務に追われる毎日だと思いますが、時には4月を振り返って、自分自身の成長を感じていただけると嬉しいです。

 さて、授業でも学生の反応が見えるようになってきたのでは、と言いましたが、徐々に説明中心の一方的な授業から学生を参加させることができるといいですよね。教育にはさまざまな方法があり、到達目標や、教育内容によって変えていく必要がありますが、今回は「発問」について考えてみたいと思います。

 学生を授業に参加させるため質問する、ということはもっとも一般的に用いる方法だと思います。皆さんは「質問」と「発問」を使い分けていますか?講義のなかで、「血圧の正常値はいくつでしたか?」とか、「足浴のお湯は何度ぐらいで準備しますか?」等は知識の想起であり、「質問」ですね。相手の理解度を確認したり、事実確認をしたりする時に用います。

 一方で、「発問」は、学生の気づきや思考を深めるために用います。教員はすでにその問題の答えや導きたい方向性をもっていて、学生に意図的に問いかけることで、主体的に考えさせたり、気づきを引き出すために用います。私が教員養成講習会受講者に授業案作成の指導をするときに、いちばん難しいと感じていたのが「発問」でした。それは、その講義の意図が最も凝縮されるのが「発問」だからです。でも、「質問」と「発問」の違いを理解してもらうこと自体もなかなか難しかったです。

 教育実践家の有田和正氏は、社会科教育において発問を重視した実践で有名な先生です。有田先生の有名な授業に「バスの運転手」をテーマにしたものがあります。私自身、初めて学んだときにハッとさせられました。「質問」と「発問」の違いが自分の中で初めて腑に落ちたのです。

 社会の授業で、バスの運転手さんが仕事をしているところが画像で映されます。さて有田先生が発問します。

「バスの運転手さんはどこを見て運転していますか?」これです!

 バスの運転手さんの仕事は何でしょうか? 当然、バスを運転することです。そのまま、「バスの運転手さんの仕事は何ですか?」と聞けばそう答えると思います。しかし、有田先生が「バスの運転手さんはどこを見て運転していますか?」と、問うことで子どもたちの頭がくるくると動き出します。つまり、この発問によって、バスの前の道路、近くを走る車や歩行者、信号、スピードメーター、時計、バスの中の人たち……と視点がどんどん拡がります。じゃあ、なぜそれを見ているのか? そこから、安全に、正確な時間に、快適に、乗客を目的地(バス停留所)に送り届ける、という本質的なバスの運転手さんの仕事が自分たちの思考の中で見えてくるのです。まさに芸術的な発問です。

 私は授業案を考えるときに、いつもこの発問を思い出します。一度もこんなすごい発問が思いついたことはありませんが、努力することはできます。こんな発問ができるためには、その教材のもつ本質的な意味がとらえられている必要があります。そのことを学生にただ知識として伝えるのでなく、学生自ら答えを導けるようにするには、どんな「発問」をするといいのか?ちょっと自分の授業を振り返ってみてください。「質問」だけになっていませんか?

この授業で必ず学んでほしい内容は○○だから、そのことを学生が自分たちで考えられるためにはどんな発問をするといいだろうか?

 そんな風にまずは考えてみてください。後は実際に授業をしたとき、どんな反応が見られるか。学生の頭が動いているな、と感じたときは本当に「やった!」っていう気持ちになります。ぜひ皆さんにも、この嬉しさを味わってほしいです。

 

高口みさき(愛知県看護協会常務理事)

 

 

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