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はじめての科研費の申請:獲得するためのポイントと秘訣
第6回 最終チェックは念入りに 第三者からのフィードバックを受ける
- レクチャー
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- 2024/09/09 掲載
自分の研究とは全く関係ない人も頼りにしてみる
ここまでで、科研費の申請書は一通り書き上げた段階となりますが、ここで満足してはいけません。ここで満足して、根拠のない自信を持ってしまうことは危険です。初学者が陥りやすい、ダニング=クルーガー効果(能力の低い人ほど自分の能力を実際よりも過大評価してしまうこと)のような認知バイアスに気をつけましょう。冷静に第三者に見てもらい、率直な評価をもらうことが大切です。
ダニング=クルーガー効果を表したグラフ
となれば、文章チェックを誰にしてもらうのか……同僚や上司といった研究者が頭に浮かぶと思います。もちろん、同僚や上司も含めた多くの人にチェックしてもらうことは有用かもしれませんが、ここでは全くの素人に確認をしてもらうことをお勧めします。
看護学の研究は、細目で分類したとしても学際的で多種多様なため、審査する研究者の多くは申請書に書かれている研究に関して、そこまで専門ではない可能性が高いといえます。同じジャンルの研究者コミュニティの中で使用される言い回しが、理解されにくいこともあります。
研究者でない一般の人、素人が読んでもある程度の理解ができる内容になっているか、当事者では気がつかない視点でチェックしてもらうことがかなり有用です。私も実際、身近な家族や全く違う職種の友人にお願いして確認してもらいました。
最終確認・提出
第1回からここまで読んでくださった方は、「まだ何かあるの」と思うかもしれません。ただ、申請書の提出は「レースが始まる」ことを意味します。レースでは、事前にどれだけ準備してきたかが明暗を分けます。勝つためには最後の調整が必要です。
第三者の意見を受け、申請書を一部修正すると整合性が崩れることがあります。意外と提出前に読み返してみると、文章の流れがおかしく、一貫性のない表現になっていることがあります。その点を留意して、最後の調整で文章を整える作業を行います。調整したらまた確認し、必要であればまた調整してまた確認……といった感じで、何度も繰り返し、丁寧に仕上げることが大切です。
私の場合は、提出先の事務の方にお願いして、文章チェックはもちろん、研究内容で分かりにくい箇所がないかを確認してもらいました。事務職は研究者ではないので、先入観なく読んでいただき、素直な助言が得られることがあります。
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科研費の申請には「こう書けば必ず採択される」といった方法はなく、無事に採択されるかどうかは、当然「運」の要素もあります。宝くじと同じで、買わなければ当たらないし、申請しなければ採択されないといった表現をされることもあります。ただ、宝くじとは違って、テーマや書き方を工夫すれば採択の確率はかなり向上すると私は思います。事実、科研費を継続して獲得している研究者も少なくありません。
申請にあたっては、真剣に、そして念入りに準備しておくことが大切です。その上で、不採択となった場合、審査結果の連絡があり、どの項目が減点されていたのかが分かる仕組みになっています。
評価が低い場合は、思い切ってテーマから考え直しましょう。評価が良く、惜しかった場合は、申請書を見直し、科研費の獲得方法について書かれた書籍もありますので、参考にしてみましょう。
他の外部資金にチャレンジして、実績を残していくことも大切です。所属する大学内の特別研究助成、関連する学会の助成金、日本私立看護系大学協会の研究助成などがお勧めです。
もし、採択された場合は、次の研究につながるように論文を書いておきましょう。次の申請で研究テーマをガラリと変えると不採択となったという話をよく耳にします。しばらくは、採択された研究と関連するテーマがよいと思います。継続して勝つためには、実績のある慣れたマシーンで、勝てるレースにでることが大切です。
この記事が初めて科研費に挑戦される先生方へ、少しでもお役に立てることを願っています。まずは敵を知り、あきらめずにチャレンジしていきましょう!