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新人教員の12か月+ 今月なにする? こんなときどうする?

4月 新人看護教員としてのスタート

  • #新人教員
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  • 2026/02/27 掲載
栗田美幸
栗田美幸
著者紹介
栗田美幸
前県立愛知看護専門学校校長


1.なんだか違う、臨床と学校――職場風土の違いに慣れていこう

 

 いざ看護教員にはなったものの、自分が想像していたものとは何か違う感じることはありませんか? 臨床でも看護師教育や臨地実習指導をしていたから、教えることには自信もあったはずなのに……。

 

1)一日中、座りっぱなしで事務作業が多い

 昨日まで座る暇もなく立ち働いていた臨床とは違い、書類を見たりテキストを読んだり必要な資料を作成したりと、机に向かっている時間が多いと感じませんか。立って歩くのはトイレのときくらい?

 また、授業の準備や資料作成等、パソコン操作に慣れていないと時間がかかります。最近では、テキストも電子書籍を使用したり、オンライン授業などを行ったりしているので、ITに強いことも求められがちです。

 とにかく、臨地実習指導と授業中以外は教務室や共同研究室での事務作業になりますので、自分で時間を見て休憩し、体を動かしてください。パソコン画面を見る時間も多いので眼精疲労対策も必要です。

 

2)「開けっ放し」の空間で仕事をする

 専門学校の教務室や大学の共同研究室は個室ではなく、人の出入りが多い共有空間です。教務室は病院でいうナースステーションのような場所ですが、ナースステーションのようにパソコン画面が外から見えない配置になっていたり、個人情報を守るための構造的な仕切りが十分に整っていたりするとは限りません。そのため、大きな声での会話や画面・資料の開きっぱなしは、情報漏えいにつながる可能性があります。学生対応の際は机から離れる、必要に応じて別室を利用するなどの配慮を行い、日頃から机上を整理整頓しておくことが大切です。

 

3)服装は自由、というわけではない

 臨床では、私服からユニフォームに着替えるので服装なんて気にしていなかったですよね。私もそうでした。特に冬の夜勤などは、車だから誰にも見られないからと、部屋着の上にコートを羽織るだけでしたね(苦笑)。

  Tシャツやショートパンツ、ミニスカートなど肌の露出が多い服装は、教育の場としては控えたほうがよいでしょう。服装は単なる身だしなみではなく、相手を尊重する気持ちの表れでもあります。学生や講師に安心感や信頼感を与えられるような、清潔感のある服装やヘアメイクを心がけたいものです。

 また、メイクにも時代ごとの流行があります。自分らしさを大切にしつつも、こだわりすぎず、その時代に合った清潔感のあるスタイルを柔軟に取り入れていく姿勢も、社会人としての成熟の1つといえるでしょう。

 

 

2.学校の職場風土ってなに?

 

1)職場風土とは何か

 「職場風土」とは、規則や組織図には書かれていないものの、働くうえで大きく影響する“空気感”や“当たり前”のことを指します。

 その職場で「どう振る舞うのが普通か」「何が大切にされているか」といった、言葉にされないルールや価値観、人間関係の距離感、判断の仕方などの集合体です。

 

2)看護学校・大学に共通する職場風土

 看護教育の現場では、次のような点が共通して見られます。

上下関係・年功序列

年齢や在職年数、役職が重視され、発言の順番や伝え方に影響することがあります。

情報共有のされ方

 

新人へのスタンス

 丁寧に教える文化もあれば、「見て覚える」が基本の職場もあり、新人教員が戸惑いやすいポイントです。

 

3)看護学校の職場風土の特徴

 専門学校では、臨床経験や実務が重視され、実習運営や学生対応が優先されがちです。教員数が少なく人間関係が密なため、安心感がある一方、合わないと息苦しさを感じることもあります。また、伝統や慣習が強く、「これまでのやり方」が大切にされる傾向があります。

 

4)大学の職場風土の特徴

 大学では、教育・研究・管理業務の役割分担が比較的明確で、研究業績が評価に直結します。個人裁量が大きく、人間関係はあっさりしていることが多いため、看護学校から移った人は距離を感じることもあります

 

5)新人教員として大切な視点

 職場風土に良し悪しはありません。大切なのは、自分に合うかどうか、理解して立ち回れるかどうかです。

 最初から無理になじもうとせず、まずは観察し、「ここでは何が大切にされているのか」を知ること。それだけで、不安や戸惑いは少しずつ軽くなっていきます。

もしかしたら、なじめないと思うことがあるかもしれません。そんな時の対処法については、第3回でふれたいと思います。

 

 

3.この1年目を乗り切るための心構えを伝授します

「今わからなくても、あなたは間違っていない」

 

1)自信が揺らぐのは、環境が変わったから

 新人看護教員として働き始めると、多くの人がどこかで「自分はこれでよいのだろうか」という悩みに直面します。臨床では自信をもって判断してきたはずなのに、教員という立場になると、その自信が揺らぐことがあります。それは、あなたの力が足りないからではありません。環境が変わり、求められる役割が変わっただけなのです

 

2)1年目は「問い直される時間」

 1年目は、これまで積み重ねてきた経験を一度問い直されるような時期です。学校という職場風土、教育現場ならではの価値観のなかで、「自分のやり方は通用しないのではないか」と感じることもあるでしょう。その戸惑いは、この1年を乗り切るための通過点でもあります。

 

3)看護観・教育観は1つではない

 看護教員の世界には、多様な価値観があります。先輩教員の考え、臨床経験を重ねてきた人の視点、学校ごとの文化にふれるうちに、「自分の考えは浅いのでは」と感じることがあるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。あなたが大切にしてきた看護観も、確かに1つの看護観であることをふまえたうえで、他者に接するようにしてみましょう。

 

4)「一意見」をもつことが、強さになる

 自分の看護観を「一意見」ととらえられれば、自信を失う必要はありません。それにより、自分の考えを大切にしながら、他者の意見にも耳を傾けられる柔らかさが生まれます。それは、この1年を折れずに過ごすための強さでもあります。

 

5)わからないまま始めてよい

 学校のやり方、学生とのかかわり方、先輩教員との距離感、すべてをすぐに理解できる人はいません。わからないまま始めて、少しずつわかっていく、それが1年目です。「今わからない自分」を責める必要はありません。

 

6)完璧を目指さないことが、この一年を支える

 この1年を乗り切るために必要なのは、完璧さではありません。「学びながら進んでいい」と自分に許可を出すことです。その積み重ねが、やがて教員としての自信へとつながっていきます。

 

 

4.すぐに入学式! 私は何を準備したらいい?

 

 看護教員として4月に入職すると、ほどなくして入学式を迎えます。

 多くの場合、入職して1週目から2週目。右も左もわからないまま、「気づけば入学式が目前」という状況になる人も少なくありません。

 

1)入学式の準備は、すでに整っていることが多い

 専門学校では学年担当制が取られていることが多いですが、大学ではそれが明確でない場合もあります。そのため、入学式の準備体制は所属先によって異なります。ただし、多くの学校では、式次第や運営方法は入職前から準備されており、4月は最終確認と微調整の段階に入っていることがほとんどです。入学辞退などによる人数修正が直前まで行われる、というようなイメージでよいでしょう。

 

2)まず確認したいのは「全体の流れ」と「自分の役割」

 新人教員としてまず行いたいのは、入学式全体の流れを把握することです。新人教員向けのオリエンテーション資料のなかに、式典に関する説明が含まれていることがあります。資料があるかを確認し、なければ「入学式に参加するのか」「自分に役割があるのか」を早めに確認しましょう。

 

3)4月は情報が行き違いやすい時期

 4月は人の入れ替わりも多く、職場全体が慌ただしい時期です。重要な情報が届いていなかったり、説明を聞き逃してしまったりすることも珍しくありません。「何か私がすることはありますか」と自分から確認することは、決して出しゃばりではなく、必要な行動です。

 

4)服装や持ち物は早めに確認する

 意外と見落としがちなのが服装です。前日や当日に慌てないためにも、集合時間、当日の動き、持ち物なども事前に確認しておきましょう。

 

5)ひとりで抱えず、確認することが安心につながる

 式典用資料は、慣れていないと見落としやすい点もあります。自分で読み込むことは大切ですが、「ここで大丈夫でしょうか」と直属の上司や同僚に一度確認しておくことで、安心して当日を迎えることができます。

 入学式は、新人教員としての最初の大きな行事ですが、すべてを完璧に理解して動けなくても構いません。流れを把握し、わからないことを確認しながら参加すること。それだけで、確実に一歩前へ進んでいけます。

 

 

5.クラス担任ってあるけど、具体的に何するの?

 

 

1)クラス全体の雰囲気づくり

 学生は成人ですので、本来は自らの考えで学校生活を過ごしていけるはずですが、なかには生活が乱れてクラス全体の雰囲気が悪くなり、皆の学習意欲に悪影響を及ぼす人もいます。教室の環境整備、授業態度、日々の生活態度等の乱れなどは、講師や他の教員からも情報を得て、常に気を配りましょう。

 

2)学生への個別指導

 クラス全体の雰囲気を観察しながら、学生の1人ひとりにも気を配る努力をしてください。学生自ら相談してくれる場合はすぐに対応できますが、学生がひとりで悩んでいることもあります。欠席や遅刻が増える、表情が暗い、成績が低下する、授業や実習に身が入ってない等の変化をとらえ、教員側からさりげなくアプローチしましょう。

 

3)学校行事の企画・運営

 学校行事のなかには、学生が主体となって企画・運営することが珍しくありません。ただ、主体的に企画・運営するのは学生ですが、担任が全体を把握し、スムーズにできるようにサポートしておきましょう。つい口や手を出してしまいそうなときもありますが、我慢です。学生自ら気づけるような助言が必要ですね。

 

4)出欠席や成績の管理

 年度末に科目の単位認定会議があります。その会議で了承されれば単位が認定されます。そのための資料作成や会議での説明、学籍簿への記載等の事務的な業務があります。事務的な作業は慣れていないと思うので、まとめてやろうとせず、少しずつコツコツとやりましょう。特に出欠席は、1か月ごとに整理しておくと学生の生活態度の変化にも気づくことができます。

 進級に関することや実習に関して、保護者への報告や保護者からの連絡や相談を受けることがあります。また、国家試験の受験に関しては、保護者に生活指導を含めて協力を求めることもあります。 

 

 

6.緊張する、初めての自己紹介 何か気をつけることはある?

 

 新人看護教員として、最初に学生の前に立つ場面が「初めての自己紹介」です。

入学式後のオリエンテーションや最初の授業など、「何を話せばいいのだろう」「失敗したらどうしよう」と、強い緊張を感じる人も多いと思います。

 まず知っておいてほしいのは、初対面の印象は、話の内容よりも言葉以外の部分で決まることが多いということです。これは看護教員として学生と出会う場面でも同じです。

 

1)表情・雰囲気

 学生が最初に見ているのは、「何を語るか」よりも「どんな表情でそこに立っているか」です。緊張していても問題ありません。学生のほうを向き、硬すぎない表情で話そうとする姿勢は、それだけで安心感につながります。

 

2)声のトーンと話す速さ

 緊張すると早口になりがちですが、それだけで「余裕がなさそう」「近寄りがたい」という印象を与えることがあります。少し意識して、ゆっくり話すだけで、学生は落ち着いて話を聞くことができます。

 

3)立ち居振る舞い・所作

 教壇での立ち方や配布物の渡し方など、細かな所作も印象を形づくります。完璧である必要はありませんが、慌てすぎず落ち着こうとする姿は、それだけで信頼につながります。

 

4)服装・清潔感

 自己紹介の場では、おしゃれである必要はありません。清潔感があり、場に合った服装であることが、「この先生は安心できそうだ」という印象につながります。

 

5)最初の一言

 長い経歴や立派な抱負よりも、

「今日から皆さんと一緒に学ばせてもらいます」

「慣れないことも多いと思いますが、よろしくお願いします」

といった言葉の“温かみ”が、学生との距離を縮めてくれます

 

6)よい先生に見せようとしなくてよい

 学生が安心するのは、完璧な教員ではありません。「話しかけてもよさそう」「わからないと言っても大丈夫そう」な人です。初対面で伝わるとよいのは、知識や指導力ではなく、「安心してかかわれそうか」という感覚です

 

 自信がなくても、不安でも大丈夫です。学生のほうを向こうとする、その姿勢があれば、初めての自己紹介としては十分なのです。

 

コラム 新人看護教員になって不安を抱えるのは当たり前

 

 昨今の教育現場は、忙しさや辛さを強調した話題で取り上げられることが多く、「教員って大変」というイメージが強いのではないでしょうか。そのようななか、きっかけはどうあれ教員になっていただき、とても嬉しいです。

 私の場合は、病院勤務の8年目に「専任教員養成講習会」に行き、翌年異動で看護師養成所の教員となりました。講習会に出るときは臨床教育のため、と聞いていたので、異動を告げられた時は驚き、私にできるのかな、と不安になりました。でも、病院では実習指導者として学生の指導に携わっていたし、少しは講習会で教育について学んでいるので、実習指導と同じ感覚で何となくできるのかなと思っていました。ところが、すぐに自分の考えが甘かったことに気づき、学校への異動を後悔しました。

 実習指導はあくまでも臨床現場の「看護師」として、患者に「看護すること」を学生に教え、その期間で役割は終了します。しかし学校の教員は、看護を学生の目線で捉え直し、長い在籍期間を通して「教えること」が仕事です。看護師としてはそれなりのキャリアもあり、ある程度は自信をもって看護していた私ですが、急に「先生」と呼ばれるようになったものの、学生からその役割を期待されても、教員としては新人です。講習会で学んだことも教育の世界ではほんのわずかで、職場で飛び交う教育用語や授業の方法についていけず、「レディネスって何?」と頭を抱えて、教員だけどむしろ教えてほしいのはこっち、という感じでした。今なら、「先生だって完璧な存在でなくてもいいんだ」と思えますが、当時はそんなこともわからず、学生の前では常に正解をもってないといけない、と言うプレッシャーが重くのしかかっていました。

 小・中・高等学校の先生は、教員になることを目指して「教育学」を何年も学習し、教員の道に入ります。しかし、看護職の場合は「看護学」を学び、ほとんどの方が看護職としてのキャリアを積んだ後、教員の道がスタートすることになります。看護職としては自立している皆さんも、教育の世界では新人です。新しい世界に飛び込み、呼び方まで変わってしまうわけですから、不安や後悔を感じるのは当たり前だと思います。

 「unlearn」という言葉があります。今ある思考や知識を見直したり、必要によっては手放し、新しい学びを受け入れたりするということです。看護職として築いてきたキャリアを一旦脇に置いて、教育者として学び直してみる、と考えてはいかがでしょうか。いままで実践してきた看護も、学生の目線から見直してみると、また新しい気づきや発見があると思います。学生は看護師に、自分は「先生」になるため、共に新人として学んでいけばいいのです。未知なことは誰しも不安ですが、「新人」であることはある種の特権です。「新人」をもう一度経験できるチャンス、そう考えると不安な気持ちが少し軽くなりませんか?

 

高口みさき(愛知県看護協会教育センター長)

 

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