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新人教員の12か月+ 今月なにする? こんなときどうする?

7月 夏休みまであと一息  「休み」に向けて行うタスクマネジメント

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  • #お悩み解決
  • 2026/06/30 掲載
大村ゆかり
大村ゆかり
著者紹介
大村ゆかり
愛知県看護協会教育センター

 

1.授業、クラス運営、学校全体の「3つのリズム」に追われる難しさ

 

 4月から3か月ほど経つと、学校全体の流れや年間スケジュールが少しずつ見えてくる頃ではないでしょうか。しかし、自分で授業を行いながらクラス運営も担うとなると、また別の難しさがあるように感じます。

 毎週容赦なくやってくる授業の流れ、そして予期せぬトラブルが突発的に起こるクラス運営の流れ、学校全体の年間行事の流れ。この「3つの異なるリズム」が並行して走るため、新人教員は自分のペースをつかむことができず、「毎日何かに追われている感覚」が強くなっていくのです。

 私自身も、この頃からその感覚に悩み、心身ともに疲弊したことを覚えています。では、いったい私たちは何に追われ、どこでエネルギーを消耗しているのでしょうか。まずは、最も突発的でエネルギーを要する「クラス運営(学生理解)」について考えてみましょう。

 

1)第1のリズム:突発的でエネルギーを要する「クラス運営(学生理解)」

 私が看護学生だった頃は、「勉強したい人は勉強する」という雰囲気がまだ残っており、学習が進まない学生に教員が積極的に声をかけることは少なかったように記憶しています。もちろん、現在ではそのようなかかわり方だけでは難しくなりました。

 現在の看護教育では、学生1人ひとりの学習状況を把握し、課題が滞りなく進んでいるか確認していく必要があります。また、課題が進まない背景には、生活リズムや友人関係、アルバイト、人間関係の悩みなど、さまざまな要因が影響していることがあります。そのため、定期面談だけではなく、必要時には個別に話を聞きながら、他の教員とも相談して対応を考えていくことが求められます。

 学生への影響要因には、一時的なものもあれば、継続的に影響するものもあります。特に家族関係は、学習や学校生活に長く影響する場合があります。保護者との関係性や家庭環境が学生を支えることもあれば、反対に負担となることもあります。クラス運営では、こうした背景も含めて学生を理解しようとする姿勢が必要になります。

 なお、学生の状況を理解するうえで、日々の「出欠状況の確認」は非常に重要な情報となります。大学などでは専門学校ほど厳密な出欠管理が求められない環境もありますが、学生の「見えないSOS」をキャッチするために、必要時にいつでも把握できる状態にしておくことが望ましいです。

 ただ、授業や実習などがあるとなかなか学生の状況を把握する時間が後回しになることがあるかと思いますし、相手を理解するということはとても難しく、必ずしも自分に話してくれたことが事実とは限らないことがあります。時には、話す相手によって学生の話も変わることもあるでしょう。それは、その学生が悪いのではなく、教員と学生という立場の違いや、自分のことをよく見せたいという誰にでもある傾向からくるものだと理解してもらいたいと思います。

 私も学生の話を親身に聞いていたつもりが、実は違う学生の姿があったことがありました。「嘘をつかれたの?」と落胆したこともありましたが、きっと話す相手やその場の空気で、少しずつ話す内容が変わる学生もいるのだと気づきました。そんなことがあるとくじけそうな気持ちになるかもしれませんが、そんなに簡単に自分のことを何でも話す人は少ないのです。信頼関係をつくることと、「今はそう感じているんだな」と受け止めつつ、今後どうしたいと考えているかを学生自身にアウトプットさせていくということでよいでしょう。 自分が忙しいなかでの行動が空回りしたと感じたときには落胆は大きいでしょうが、それでも感情的にならずに「今はこうなのね」と受け止めていく必要があります。この「正解が見えず、感情をコントロールしなければならない学生対応」こそが、教員のエネルギーを奪い、ペースを乱す大きな要因の1つなのです。

 

2)第2のリズム:「見えない時間」に追われる「授業準備」

 一方で、もう1つの大きな負担が「授業」です。授業は「1コマ90分」と言われますが、実際には見えない時間が数多く含まれています。授業準備、資料作成、課題確認、授業後の振り返りなど、授業の前後にも多くの時間が必要になります。さらに、1単位15回の授業が積み重なっていくことで、「毎週授業が来る」という感覚に追われるようになっていきます。

 そこに臨地実習の指導が加わると、さらに時間の調整が難しくなります。最初の頃は、どうしても勤務時間内だけでは対応しきれないこともあると思います。このように、「突発的な対応を求められるクラス運営」と、「締め切りが毎週やってくる授業準備」という性質の異なるマルチタスクに挟まれるからこそ、私たちはペースを崩してしまうのです。

 

3)第3のリズム:組織として容赦なく動く「学校全体の流れ(領域・委員会の仕事)」

 そして、これら2つの日常業務の背後で、もう1つ大きな波として動いているのが「学校全体の流れ」です。ここには、オープンキャンパスや式典といった学校行事だけでなく、各領域の会議や、国家試験対策・実習・広報といった「委員会の仕事」がずっしりと含まれています。 これらの多くは、年間スケジュールに沿って組織的に動くため、個人の都合で時期をずらすことができません。「まだ先のこと」と思っていても、自分の担当月や締め切りは容赦なくやってきます。日々のクラス運営や授業準備で手一杯になっているところに、この「学校全体の重いタスク」が定期的に割り込んでくる。これもまた、新人教員の心の余裕とエネルギーを奪う大きな要因なのです。

 

4)3つのリズムと共存する、継続可能なペースづくり

 では、この「3つの異なるリズム」に挟まれながら、私たちはどうやってペースを保てばよいのでしょうか。大切なことは、「どの仕事を、どの時間で行うのか」を自分なりに整理していくことです。

  授業準備についても、「授業資料をつくる」という大きなタスクではなく、「90分の流れを考える」「必要な教材を整理する」「課題を確認する」「配布資料を作成する」というように細分化していくと、隙間時間を使いやすくなります。 ここに、領域や委員会の年間スケジュールから逆算した「今月中に手をつけるべきこと」をあらかじめ自分のカレンダーに小さく落とし込んでおく。そうして「学校全体の流れ」を先回りして把握しておくだけでも、突発的な学生対応が入ったときの焦りを格段に減らすことができます。

 新人教員の頃は、「すべてを完璧にやらなければ」と思いやすい時期でもあります。しかし、まずは「クラス運営」と「授業のルーティン化」を両立させながら、この2つを破綻させずに継続していくこと。そして、自分自身がすり減らずに続けられる「自分なりのハイブリッドなペース」を見つけていくことが、何よりも大切なのではないかと思います。

 私自身も、なかなかペースをつかむことができませんでした。そのなかで、1つ助けになったのは、「クラス運営」と「授業準備」のやるべきことを、それぞれ細かく分けて整理することでした。

 たとえばクラス運営であれば、

・出欠状況を週1回確認する

・遅刻・早退・欠席が続く学生を把握する

・気になる様子があれば声をかける

・必要時は他教員と情報共有する

など、小さな行動単位で整理していきます。

 授業準備についても、「授業資料をつくる」という大きなタスクではなく、

・90分の流れを考える

・必要な教材を整理する

・課題を確認する

・配布資料を作成する

というように細分化していくと、隙間時間を使いやすくなります。

 

 

2.臨地実習指導中なのに、授業もするの?

 

1)移動の焦りと、頭が切り替わらない難しさ

 臨地実習指導中は、学生とともに病院で過ごす体制のところもあるでしょうが、実習指導中であっても学校に戻って授業を行うところも少なくありません。私が勤務していた学校でも、臨地実習指導中に週1,2回授業を担当していました。

 私は最初、臨地実習指導のみを担当していた時期がありました。その頃は、学生と十分にかかわる時間をもつことができ、慣れない実習指導も何とか行えていました。先輩教員が「今から学校に戻ります」と話しているのを聞いて、「大変そうだな」と思っていたことを覚えています。

 実際に自分がやってみると、実習の場から離れて授業をしたり、授業をしてから病院へ向かったりすることは、想像以上に大変でした。移動にどのくらい時間がかかるのか、どのタイミングで準備を進めればよいのか、頭の切り替えもうまくできず、常に落ち着かない気持ちで過ごしていたように思います。

 今思えば、「少しでも早く病院に戻らなければ」「授業の準備もあるから早く学校に戻りたい」と、ただでさえ余裕がないなかで、さらに自分を急き立てていたのだと思います。

 

2)「ひとりで抱え込まない」ための事前調整

 実習中は、自分が病院を離れている間の学生対応や、授業資料の印刷、課題の確認など、気になることが次々と出てきます。「学校に戻ったら、これをやろう」と計画を立てても、いざ戻ると他の教員から不在時の情報や学生からの対応に追われて、どんどん時間が押してしまい、なかなか思うように仕事が進まなかったように思います。

 自分に任されている仕事だからこそ、「もっとしっかりやらなければ」と思うこともあると思います。でも、実習指導はひとりだけで抱え込むものではありません。

 自分が実習場所を離れている間は、他の教員にお願いしたり、病院の指導者さんにあらかじめ相談しておいたりするなど、事前に調整しておくことが大切です。また、移動時間もぎりぎりに設定せず、少し余裕をもって計画しておくと、気持ちにもゆとりが生まれます。

 学生にも、「何かあったら〇時までは〇〇先生に相談してくださいね」と事前に伝えておくだけで、自分が不在の時も安心して授業に集中しやすくなります。

 また、授業資料の印刷なども、できるだけ実習開始前に準備しておくと、慌てずに済むことが多いと思います。

 慣れるまでは、本当に大変だと思います。でも、大丈夫です。続けていくうちに、必ず自分なりのペースややり方が見つかってきます。

 

3)限界を迎える前に――先輩教員の知恵を借りる

 もし余裕がなければ、ひとりで抱え込まず、「どうしたらうまく回せるのだろう」と少し立ち止まって考えてみてください。そして、落ち着いて仕事をされている先輩教員に、「どのように工夫されていますか」と尋ねてみてください。きっと、自分では思いつかなかったような「移動時間の活用法」や「資料準備の裏ワザ」など、実践的な工夫やアイデアを教えてもらえると思います。

 「完璧な教員」をひとりで目指す必要はありません。周囲の力や先輩の知恵を上手に借りながら、まずはこの過酷な時期を心身ともに健康に乗り切ることを最優先に考えていきましょう。

 

 

3.アルバイトや遊びに夢中の夏休み

 ――本業を忘れてしまわないように課題の検討

 

1)学生の「心境の変化」を予測した、夏休み前の動機づけ

 もうすぐ夏休みに入ります。とはいっても、教員には学生ほど長い夏休みがあるわけではありません。大学では授業や講義がない期間に比較的自由に時間を使えることもあるかもしれませんが、私が勤務していた専門学校では、そうはいきませんでした。補習実習など夏休みでも実習指導が入っていることもあります。「学生は夏休みなのに……」と、少しうらやましく感じていたことを思い出します。

 学生たちも、きっと夏休みを楽しみにしていると思います。実習や授業が続く毎日のなかで、ようやく一息つける時間です。アルバイトをしたり、友人と遊びに出かけたり、学校のことを少し忘れて夏を満喫したいと思うのも自然なことだと思います。

 ただ、その一方で、長期間まったく勉強から離れてしまうと、4月から積み重ねてきた学びを忘れてしまうこともあります。夏休み明けに授業や試験が始まったとき、「思った以上に覚えていなかった」と学生自身が困ってしまうことも少なくありません。

 また、アルバイトを通して収入を得たり、人間関係が広がる、他の大学などに通っている学生と親しくなるなど経験をするなかで、「こんなに大変な思いをして看護師を目指さなくてもよいのではないか」と迷いが生じる学生もいます。

 このように学生たちは、夏休みの間にもさまざまな経験をしながら、自分の進路や将来について考えるものです。だからこそ、夏休みに入る前には、「どのような課題を設定するか」「どのように学習への動機づけを行うか」を考えておく必要があります。

そもそも課題を出す場合、「なぜこの課題を行うのか」を学生にきちんと伝える必要があります。ただ義務として課題を出されるよりも、「夏休み明けに自分が困らないため」「秋からの実習にスムーズに入るため」と事前に意味づけをして動機づけを行うことで、学生の取り組み方や意識も大きく変わってくるように思います。

 

2)量より質――学校との「細い糸」を繋ぎ続ける課題の検討

 課題の量はつい多くしてしまいがちですが、大切なのは量ではなく、“夏休みの間も少しだけ学校とのつながりをもち続けられること”ではないかと思います。

 たとえば、以下のように無理なく継続できる内容にすることで、学びを完全に途切れさせずに済むことがあります。

・解剖生理や疾患について短時間で振り返る課題

・実習で学んだことを整理するリフレクション

・看護に関するニュースや記事を読んで感じたことを書く課題

・夏休み後の授業につながる事前学習

 また、一見看護とは関係の薄そうなアルバイトの経験を活かし、「アルバイト先で出会った『素敵なお客さま(先輩)』『対応が難しかった場面』の分析」など日常の場から看護に必要な要素を抜き出せるような課題でもよいかもしれません。

これらをさらに、各学年の特徴や時期に合わせた「7月の指導」へと落とし込んでいくと、より効果的なアプローチが見えてきます。

 

3)「中だるみ」や「プレッシャー」を防ぐ、学年別の7月指導法

・1年生:生活リズムの維持と『具体性』

 まず1年生は、4月からの緊張がようやく解ける時期です。初めての長い休みで完全に生活リズムを崩してしまわないよう、課題は「曖昧さをなくすこと」がポイントになります。「毎日15分、このドリルを進める」「解剖生理のこのページを写す」など、やることが一目でわかる具体的なルールを提示します。また、アルバイトを始める学生も多いため、「接客のなかで、相手の立場に立った言葉かけができた瞬間をメモしてくる」といった、日常の延長線上で看護の『コミュニケーション』を意識できるような工夫もお勧めです。

・2年生:本業の再認識と『多重課題』への応用

 学校生活にもすっかり慣れ、もっとも中だるみしやすいのが2年生の夏です。休みが明ければ9月からは本格的な専門領域の実習がスタートするわけですから、解放感のなかで本業を忘れてしまわないよう、「実習に行く病棟でよく出会う疾患」についての事前学習など、少し先を見据えた課題を設定します。また、アルバイトや遊びに夢中になる時期だからこそ、「アルバイトの混雑時(ピーク時)に、どう優先順位をつけて動いたか」を振り返らせるのもおもしろい試みです。臨床で必ずぶつかる『多重課題への対応』の力を、身近なアルバイトを通して養うことができます。

 ・最終学年(3・4年生):焦りの緩和と『ゴールの細分化』 

 そして最終学年(3年制の3年生、あるいは4年制の4年生)にとっては、夏休みこそが国試対策の天王山であり、実習のまとめ(ケーススタディ)を形にする正念場です。焦りとプレッシャーでパンクしそうな学生も少なくありません。

 この時期の最終学年には、ただ大量の過去問を突きつけるのではなく、「7月中に、夏休みの1日ごとの学習計画表を一緒につくる」といった、目に見える安心感を与える指導が大切です。ケーススタディで行き詰まっている学生には、7月のうちに個別でフリーズしているポイントを紐解き、「夏休み中はここまで書ければ合格だよ」と、ゴールを小分けにして持ち帰らせるかかわりが、モチベーションを維持する鍵になります。

 

 夏休みは、学生にとって気持ちをリフレッシュする大切な時間でもあります。だからこそ、“休むこと”と“学びをつなげること”の両方を意識しながら、課題を考えていけるとよいのではないでしょうか。

 

 

4.学校は休みだけど、教員は次年度の学生募集に向けて準備開始

 ――オープンキャンパスのあれこれ

 

1)なぜ「教育者」が学生募集に向き合うべきなのか

 学生の夏休み期間は、看護教員にとっては次年度の学生募集に向けた準備が本格化する時期でもあります。

 近年、専門学校の定員充足率は低下傾向にあり、地域によっては定員割れや募集停止、閉校となる学校も珍しくなくなりました。学校によっては看護教員のかかわりが少ない場合もあるかもしれませんが、学生募集が学校運営において重要なことに変わりはありません。どれだけよい教育を行っていても、学生が来なくなれば学校は成り立たないので、できる限り積極的に参加しましょう。

 学生募集は決して広報担当者や事務方だけの仕事ではなく、学校全体で取り組むべき最重要の「教育活動」の1つなのです。

 多くの大学や専門学校では、夏休み期間を中心にオープンキャンパスを開催しています。皆さんは進学を考えた際、オープンキャンパスに参加されましたか。オープンキャンパスは、進学を考えている高校生や保護者に向けて学校を開放し、学校の魅力や学びの特徴を伝える大切な機会です。看護体験や模擬授業を通して実際の学びを体験したり、在校生や教員と話をしたりすることで、「この学校で学ぶイメージ」を具体的にもってもらうことができます。

 

2)高校生と保護者が見ている「数字に表れない学校の空気」

 看護教員は、模擬授業の企画や看護体験の準備、案内役となる在校生との調整、学校説明、個別相談など、さまざまな形でオープンキャンパスにかかわります。授業や実習指導、クラス運営など日々の業務に加えて準備を行うため、大変だと感じることもあるかもしれません。しかし、自分たちの学校がどのような教育方針で学生を育てているのか、どのような学習環境があるのかを直接伝えられる貴重な機会でもあります。

・教員と在校生の距離感や関係性

・すれ違う教職員の挨拶や学校全体の雰囲気

・「この先生たちは、自分を大切に育ててくれそうか」という安心感

 彼らはこれらを五感でシビアに観察しています。進路選択の最後の決め手になるのは、「この先生たちと一緒に学びたい」と感じられる体験そのものなのです。自分たちの学校がどのような教育方針で学生を育てているのか、その「温かさ」や「情熱」を直接肌で伝えられる機会は、オープンキャンパスをおいて他にありません。

 

3)持続可能な職場(環境)を教員自らの手で確保する

  新人教員の頃は、まだ学校への愛着が薄いかもしれません。しかし、定員割れや閉校が珍しくない現代において、学生募集は「自分自身の働く大切な場所(職場)を守り、安定した環境で教育を続けるため」の、最も確実で地道な投資でもあります。どれほど優れた教育への志があっても、教壇に立つ場所そのものが失われてしまっては、それを発揮する機会すらなくなってしまいます。

 また、学生募集がうまくいかないと、結果として教員の労働環境そのものにしわ寄せが及ぶこともあります。オープンキャンパスに主体的・積極的にかかわることは、巡り巡って「未来の自分が、心身ともに余裕を持って教育に集中できる環境を、自分自身で確保する」ということでもあるのです。 完璧な学校説明をする必要はありません。あなたが今、目の前の教育に真摯に向き合っている姿を見せるだけで、それは十分な学校の魅力になります。自分が安心して教鞭を執り続けられる基盤を守るために、ぜひ前向きな当事者意識をもって参加してみてください。

 

 

.「ついていけない」と悩む学生への個別アプローチ

 ――3つのつまずきパターンに応じた教員の「引き出し」の増やし方

 

 学校の授業や臨地実習を順調にこなしていける学生がいる一方で、うまくついていけずに悩む学生もクラスのなかに一定数存在します。特にこの7月、夏休みを目前に控えた時期は、こうした学生への早期対応が極めて重要になります。つまずきや悩みを抱えたまま長期休暇に入ってしまうと、休み中に不安が膨れ上がり、休暇明けのモチベーション低下や不登校、最悪の場合はリタイアにつながってしまうリスクがあるからです。「つまずいている学生をそのまま夏休みに突入させない」ための防波堤として、今こそ個別のアプローチが求められます。

 ここでは、そんな「ついていけない」学生への対処を考えます。

 学生がつまずく背景はさまざまです。学内での成績はあまり振るわなくても、臨地実習では患者さんに積極的にかかわり、生き生きと看護を実践できる学生もいれば、反対に、学内成績は優秀でも、臨地実習になると患者との関係づくりや全体像の把握に苦労する学生もいます。また、「なんとなく看護の道を選んだものの、自分には向いていないのではないか」と感じ、学習意欲が低下してしまう学生もいます。

 このような学生に対して、「単にできない学生」ととらえるのか、「何かをがんばろうとしているけれど、うまく対応できずに困っている学生」ととらえるのかによって、私たち教員のかかわり方も変わってくるのではないでしょうか。

 大切なのは、学生が「どこで、何につまずいているのか」を正しく見極め、それぞれのタイプに合わせた個別的なかかわり(引き出し)をもつことです。

 

1)学内成績が振るわない「授業についていけない」学生への対処法

 講義のスピードについていけなかったり、テストで赤点を繰り返したりする学生に対しては、「なぜ勉強しないのか」と責めるのではなく、まずは「どこにつまずいているのか」を一緒に整理していく視点が大切です。

 このタイプの学生は、勉強のやり方そのものがわからなかったり、要点を絞り込めずにパニックになっていたりすることが多いものです。また、もともと自宅での学習習慣がなく、「テスト前だけ詰め込めばなんとかなる」と考えているケースも少なくありません。しかし、看護教育は科目数が非常に多く、膨大な知識の積み重ねが求められるため、これまでの場当たり的な勉強法ではすぐに限界を迎えてしまいます。

 そのため、教員には単に「勉強しなさい」と促すだけでなく、日々の学習習慣を身につけられるような具体的な支援が求められます。 まずは丁寧に話を聴き、「毎日15分だけこの過去問を解く」「今日はこの疾患の定義だけ覚える」など、学生自身が「これならできるかもしれない」と思える小さなスモールステップを提示し、無理のないルーティンをつくってあげること。この成功体験につなげていくかかわりが、結果として自立的な学習習慣の定着を促します。

 

2)人間関係や展開で行き詰まる「臨地実習についていけない」学生への対処法

 一方で、座学は優秀でも、臨地実習になった途端に動けなくなってしまう学生もいます。患者さんとの関係づくりや、情報の全体像を把握することに苦労し、記録の多さに圧倒されてしまうタイプです。

 私が臨地実習指導で心がけているのは、「学生自身が行ったケアによって、患者さんがどう変化したか」に目を向けられるよう支援することです。最初は「記録を書くのが嫌だ」「勉強したくない」と話していた学生でも、自分がかかわったことで患者さんが笑顔になったり状態がよくなったりする変化を肌で感じると、「あの患者さんにもっと何かしてあげたい」と主体的に考えられるようになります。その瞬間、学生の表情は一気に輝き出し、学生の行動が劇的に変わることがあります。実習でのつまずきには、教員がケアの楽しさややりがいを感じられる「きっかけ(意味づけ)」を一緒につくることが大切です。

 

3)進路迷子になっている「すべてにやる気をなくした」学生への対処法

 もっとも対応が難しいのが、「自分には看護が向いていないのではないか」と感じ、学習意欲そのものが低下(モチベーションが枯渇)してしまっている学生です。 モチベーションが低下している要因を明らかにすることは重要ですが、本人自身も自分の気持ちをうまく整理できていなかったり、言語化できていなかったりすることがあります。

 コーチングでは、「答えは本人の中にある」と言われています。ここでは教員が「看護の素晴らしさ」を一方的に押しつけるのではなく、まずは学生の「しんどい」「向いていないかも」という不安をそのまま傾聴することが先決です。その上で、じっくり時間をかけて「本当はどうしたいと考えているのか」を学生自身にアウトプットさせていくかかわりが、自律的な動機づけへとつながっていきます。

 私自身も、すべてが得意なわけではありません。苦手なこともありますし、周囲の助けを借りながら仕事をしていることもあります。皆さんも同じではないでしょうか。学生全体への動機づけとして、「数年後には看護師として働いている自分」をイメージできるよう将来像を支援することも大切ですが、まずは目の前の学生がどの段階で立ち止まっているのかを見極め、伴走していく姿勢こそが、教員として大切な役割なのだと感じています。

 

 

.臨地実習に合格していない学生の夏の補修実習・再実習

 ――夏休み前からの仕込みが命! 前任教員からの引継ぎと事前アプローチ

 

 夏休み期間は、学生にとって本来は休息の時間ですが、一方で「補習実習」や「再実習」が集中して行われる過酷な時期でもあります。学校によって取り決めが違いますし、補習実習をしていないところもあるので一概にはいえませんが、一般的に「補習実習」とは、忌引きなどの理由で実習時間数が不足した学生が、その不足分を補うために行う実習を指します。一方、「再実習」とは、必要な実習時間数は満たしているものの、実習目標の達成が十分ではなく、再度実習を行う必要がある場合を指します。

 「夏休みに入ったら準備を始めよう」では完全に手遅れになります。なぜなら、夏休みが始まった瞬間にはすでに補習実習・再実習のスケジュールが動き出すからです。教員にとっては、「夏休み前(前期実習の終盤から直後)」の段階で、いかに段取りを組んでおけるかが勝負の分かれ目となります。ここで気をつけていただきたいのは、同じ時間数不足でも理由によって対応が違うということです。各々学生便覧で確認してみてください。

 

1)「補習実習」の対象者を最小限に抑えるための、実習担当教員による日頃の管理

 補習実習の場合は、主に出席時間数を補うことが目的となるため、学生の取り組みそのものに大きな問題がないことも少なくありません。 しかし、これを実習の最終日や夏休み直前になってから「あ、時間数が足りない!」とあわてて調整するのは至難の業です。だからこそ、各病棟で直接学生を指導している実習担当教員が、日頃から時間数の管理にアンテナを張っておく必要があります。

 実習担当教員が日々、欠席・遅刻時間数をタイムリーに把握し、「このままだと夏に補習実習になる可能性がある」と早めに予測できていれば、実習期間中や直後の段階で、速やかに学校側の教務(クラス担任や実習調整者)へ報告を上げることができます。この早い段階での教員間の連携があるからこそ、夏休み前の段階で実習施設との調整や指導者の確保へスムーズに動くことが可能になるのです。

 とはいえ、教員側がどれだけ数字を管理していても、学生が休んでしまっては補習実習を防げません。現場の実習担当教員ができるもっとも重要なアプローチは、学生が日頃から体調管理に努められるよう、日々の実習のなかで日常的に声をかけ続けることです。

 看護学生の実習は想像以上にハードで、緊張や睡眠不足から体調を崩しがちです。だからこそ、毎日のカンファレンスや指導の合間に「しっかり食べて睡眠時間は確保できている?」「無理をしすぎる前に相談してね」と、体調面への配慮を言葉にして伝えましょう。「体調を整えることも、プロとしての看護実践の第一歩である」という意識を日頃から育んでおくこと。現場の教員によるこの地道なかかわりこそが、結果として夏の補修実習の対象者を最小限に抑える、もっとも効果的な予防策になるのです。

 

2)「再実習」の準備:新人教員がまずやるべき「前任教員からの引き継ぎ」

 一方、再実習の場合は少し状況が異なります。時間数は満たしていても、実習目標に到達できなかった明確な理由があるため、その課題を改善できるよう支援しなければなりません。

 通常、新人教員がひとりで再実習の指導を担当することは少ないと思いますが、
再実習の学生が多かったり、領域担当者が1人の場合など、学校の状況によって、再実習の担当者になることもあるかと思います。

 だからこそ、夏休み前の段階で、以下の「2つの確認」を徹底的に行う必要があります。

・前任教員への確認:不合格になった実習の担当教員から、学生が具体的にどこでつまずいたのか(コミュニケーションの苦手さ、アセスメントの不足、記録の遅れなど)や、当時の指導内容、学生の課題をシビアに引き継ぐ。

・学生本人への確認:前回の実習を踏まえ、本人が自分の課題をどのように捉えているか、この夏で何ができるようになりたいと考えているか、面談等で事前に意思を確認しておく。

 この事前準備があれば、実習初日から「よし、今回はここを目標にがんばろうね」と、ブレのない的確なスタートダッシュを切ることが可能になります。

 

3)「なぜできなかったか」ではなく「何ができれば合格か」を提示する

 再実習の現場では、「なぜできなかったのか」を責めるかかわりは厳禁です。ただでさえ学生は「夏休みなのに自分だけ……」「みんなについていけなかった」と強い劣等感や不安を抱えて実習室にやってきます。教員に求められるのは、前任教員から引き継いだ情報をもとに、「何ができれば今回の目標達成(合格)に近づくのか」という明確なゴールを提示し、小さな成功体験を積み重ねられるよう伴走することです。

 たとえば、コミュニケーションが苦手で必要な情報収集ができなかった学生なら、まずは患者さんとの関係性を築くステップから支援します。具体的には、教員が学生と一緒に患者さんのもとへ赴き、一緒にお話を伺うことから始めます。最初から学生がうまく話せなくても全く問題ありません。「これから話せるようになればよい」のですから、教員がその場を和ませて話しやすい環境を整え、学生自身の手で情報収集ができるようサポートしていきましょう。

 また、アセスメントや記録のまとめ方で苦労している学生に対しては、「どこに何を書くべきか」「患者さんから得た情報をどう活用すればよいか」を机の上で一緒に確認していきます。まずは学生に少し自分で考えてもらい、もし進まないようであればタイムリーに助言をはさむなどして、どこでつまずいているのかをリアルタイムで明らかにしながらステップを進めていきます。

 私自身も、初めて再実習の学生を担当したときはとても緊張しました。再実習は少人数で行われることが多く、学生との距離も近くなります。「何とか合格につなげたい」という思いが強かったため、学生の行動や記録を丁寧に確認しながら、早めに声をかけたり、一緒に振り返りを行ったりしていました。しかし、そのときにハッと気づかされたのです。教員だけでなく、学生自身も「何とか合格したい!」と心から強く願っているのだ、ということに。

 お互いが目指すゴール(目標)は、実は最初から同じ場所にあります。だからこそ、「どうやったら合格できるか」を教員が上から指導するのではなく、同じ目線で一緒に考えていく姿勢が大切です。そのかかわりのなかで、学生が「看護って、患者さんの困りごとに対して、看護の力で何ができるかを考えることなんだ」と、自発的に気づいてくれる瞬間が訪れると最高ですね。

 「看護過程」などという難しい言葉を使うから、学生は何を書けばいいのかわからなくなってしまうのかもしれません。そんなときは、ぜひ以下のシンプルな問いかけを学生に投げかけてみてください。

・「この患者さんは、なぜ入院しているのかな?」

・「患者さんは、これからどうなりたいと思っているかな?」

・「そのために、看護師としてできることはどんなことがあるだろう?」

 こうしたわかりやすい言葉で噛み砕いて伝えていくことこそが、結果として学生が『看護の本質』を深く理解するための近道になるのではないかと思います。

もちろん、再実習だからといって特別な指導技術が必要なわけではありません。学生がどこでつまずいているのかを理解し、1つずつ課題を解決していくことが大切です。新人教員の皆さんも不安に感じるかもしれませんが、ひとりで抱え込まず、実習担当者や先輩教員に相談しながら進めてください。再実習は学生にとっても、そして教員にとっても、教育の本質を学ぶ大きな成長の機会になります。学生の可能性を信じながら、一緒に目標達成を目指していきましょう。

 

 

コラム 看護教員を辞めたいと感じたら

 

 看護教員になって、3か月が経ちました。教員になった当初は不安な気持ちでいっぱいだったでしょうが、ちょっとずつ仕事が見えてきたところかと思います。

 思ったより事務的な業務が多く、授業の準備ができない。夜勤はないけど、夜遅くまでいろいろな業務をしないと追いつかない。夏休みなど、学生の長期の休みは時間があるかと思えば、補習実習や学校見学会等で忙しそう……。学校に勤務することになった理由はさまざまでしょうが、業務が見えてくると「こんなはずじゃなかった」という後悔が生まれてくる方もいると思います。

 また、職場の人間関係がいろいろ見えてくる時期でもあります。相談しやすい人は見つかりましたか? 第3回の「5月」の項に「職場風土になじめないと感じたとき」のコラムがありましたが、苦手な先生から注意を受けたり、思っていることがうまく伝えられなくて歯がゆい思いをしたり、と、新しい場所で自分の居場所をつくることはかなりエネルギーがいるものです。

 「石の上にも三年」、なんて言葉がありますが、そんな考えは今どきではないのかもしれません。でも、もう少しがんばってみましょう。私も教員の仕事の楽しさややりがいを感じたのは、教員になってかなり経ってからだったからです。

 教育の世界では「教え育てる」という言葉の通り、育てるわけですから、結果がすぐに見えることのほうが少ないです。ですが、相手の成長を信じて見守り、できなかったことができるようになる、それを目の当たりにできることも教育の醍醐味です。血圧測定を学び出したときは「コロトコフ音が聞こえません」、と半泣きだった学生が基礎看護学実習で患者さんにちゃんと測定できている姿や、実習終了のときに受け持ち患者さんから「ありがとう」と言われて涙を流している姿を見るときは、思わず感動してこちらまで涙がこぼれます。まだ、高校生にしか見えない1年生がどんどん成長し、遂に卒業式を迎えるときには本当に人の成長のすばらしさを実感できます。1年生のときの面影はなく、そこには看護師にしか見えない成長した姿が現れ、「先生、ありがとう」と言ってくれるのです。教員としてこれ以上の喜びはありません。また、臨地実習先でその後の成長した姿に出会え、「先生!」と明るい笑顔をみせてくれます。これは看護教育ならではのよさかもしれません。学生にとってはいくつになっても「先生」なのです。

 自分ひとりでできることはたかが知れていますが、あなたが育てた何十人もの看護師はそれぞれがたくさんの患者を助けることになります。1人の学生を育てることで、一体何人の患者を助けることができるでしょう? そしてその人がまた、多くの看護師を育てたら? あなたの看護に対する想いをどんどん繋いで行ける、そんな仕事をもてることはとても幸せなことだと思います。

 そして、臨床ではじっくり考えることができなかった、看護とは何か、ということを今一度考え直すことができます。たとえば、看護師として働いているときは、もっと患者にかかわりたかったのに業務に追われて十分思いを聴くことができなかった、と後ろめたい気持ちを抱いていることはありませんか? 学生に教えることを通して、そのときの自分の思いに気づき、実はちゃんとケアできていたのかもしれない、とそのときの自分を受け入れることができることもあります。

 学生には無限の可能性があります。VUCAの時代といわれる今、価値観も急に変わってしまいます。今自分がもっている価値観が本当に正しいのか、これから求められる看護とは何か、学生の瑞々しい感性を目の当たりにすることで、自分自身ももう一度学生時代を生き直せるのです。

 ちょっと違うかもしれませんが、私が以前、「新人看護職員の職業継続に影響する要因」1)を調査した際、「嫌な出来事があったとき、今の経験から得られるものを探す」というレジリエンスが職業継続に影響していることがわかりました。答えのない教育の世界でさまざまな経験のなかから学べることを探せる人であり続ける、あなた自身もすごい成長の機会を与えられているかもしれません。人間関係やどんな大変な出来事も嫌な経験だけでとどまらず、その経験を学びに転換し教員を続ける原動力にしてもらえると嬉しいです。

 あなたはまだ、教育の醍醐味を味わっていませんよ。今やめてしまうのは本当にもったいないです。騙されたと思って、もう少しがんばってみましょう。3月に卒業生を送り出すころには、逆にやめられなくなっているかもしれません。

 

高口みさき(愛知県看護協会常務理事)

 

1)高口みさき他(2014).新人看護職員の職業継続に影響する要因, 看護管理,24(3),282-288.

 

 

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