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看護教員のための教材活用資料集1
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- 2026/08/04 掲載

| デジタルネイティブ世代の全面的な入学を迎えた今、看護教育は何に備えるべきでしょうか。DX が進む現代医療に対応できる看護師を育成するためには、もはや教育は後追いではなく、先手を打つことが求められます。栃木県の国際ティビィシィ小山看護専門学校では、未来教育デザイナー・鈴木敏恵氏のもと、「意志ある学び」を軸にしたプロジェクト学習(PBL)とポートフォリオ、そしてAI 活用を駆使した教育を展開。また、デジタル教科書を確かな知識のよりどころとして位置付け、情報過多の時代に不可欠なリテラシー教育を徹底しています。そこで今回は、デジタルとリアリティを往復しながら、未来の看護師を育てる同校の実践に迫りました。 |
「意志ある学び」を実現する! デジタル教科書
プロジェクト学習×ポートフォリオ×AI
鈴木敏恵 氏(未来教育デザイナー/一級建築士)
渡邉和子 氏(国際ティビィシィ小山看護専門学校副校長)
中島一美 氏(国際ティビィシィ小山看護専門学校教務科長) 所属・肩書は取材当時
AI 時代の看護教育、その羅針盤となるもの
鈴木 私が国際ティビィシィ小山看護専門学校(以下、本校)を素晴らしいと感じるのは、何よりも未来志向であることです。私たちは常に未来へ向かって今日を生きていますが、社会は今、かつてないスピードで変化しています。特に医療現場ではDX 化が著しく、一定規模以上の病院では紙カルテを見ることがほとんどありません。テクノロジーの進歩と導入が医療の在り方そのものを大きく変えています。そのような時代に看護教育に求められるのは、単に技術を使いこなせるかどうかではなく、「どのような学生を育てたいか」という未来志向の教育ビジョンです。
渡邉 本校がデジタル教科書を導入・推進した背景にも、明確な理由があります。1 つは、地元・小山市の小中学校で教育DX が進み、その環境で学んできた学生が入学してくると見越したこと。もう1 つは、実際の学生の行動からの気づきです。導入当初は紙とデジタルを併用していましたが、紙の教科書はロッカーに眠ったままでした。その光景を見て、学生にとってデジタルが当たり前なのだと確信し、完全移行を決断しました。
鈴木 DX とは、単なるデジタル化やICT 導入ではありません。DX によって、これまで当たり前だったものが根本から変化します。その際たるものの1 つが教科書の存在です。これまでは教師が知識を教えるための存在だった教科書が、デジタル化によって、学生自らが必要な知識を探し、即座に得られる存在になったのです。
渡邉 その変化を後押しするためには、教師側の発想転換が欠かせませんでした。「今、社会や医療現場で何が起きているのか」「今、学生は何を感じてどんな学び方をしているか」を常に意識し、私たち自身が教育観をアップデートし続ける必要があります。
鈴木 全ては目の前の現実を直視することから始まります。患者さんの今、社会の今を的確に捉えてこそ、未来の看護師として学生を送り出すことができます。手元に情報機器さえあれば、社会に出た後も自分で学び続けることができます。
渡邉 そして、鈴木先生との関わる中で気づいたのが、教育DX とはツールを使って知識を教え込むことではないという点でした。
鈴木 それがまさに、与えられた学びから「意志ある学び」への転換です。知識を与える教育(ティーチング)から、学生が自分で知識や情報を獲得する未来教育への変化です。この世界は「知の果樹園」であると気づき、リンゴを与えられるのを待つのではなく、自ら手を伸ばす人にるのが、私が大切にする「未来教育プロジェクト学習」です。
従来の教育は、教科書や資料をもとに知識を与えるのが主流でした。しかし看護の対象は地域や文化、個人によって実にさまざまです。DX が加速する社会はさらにダイナミックに多様化していき、既存の知識をティーチングするだけではこうした現実を到底カバーしきれません。
だからこそ、先生がどう教えるかに悩むのではなく、どうしたら「意志ある学び」となるのか」へと考えをシフトし、自分たちが当たり前と思ってきた授業や関わり方を一度まっさらにしてみる必要があるでしょう。
渡邉 その考えのもと、本校がプロジェクト学習(以下、PBL)を導入して8 年になります。教員側も当初、プロジェクトという正解がないものに慣れるまでには時間がかかりました。親切心やもどかしさから、つい教えすぎてしまいました。
鈴木 正解があることは教えられますが、私たちが向き合う現実には唯一の正解はありません。そして、医療現場でも看護教育の日常でも、AI は今後ますます当たり前の存在になるでしょう。どんなレポートでもAI が瞬時に作成してしまう時代であり、AI がインフラとなる社会はすでに始まっています。
その中で、人間の独自性をあらためて大切にすることが、看護教育の本質と普遍性を蘇らせることにつながります。AI 時代をどう生きるのか、その羅針盤ともなるのが「未来教育―6 つのスピリット」です。PBL、ポートフォリオ、対話コーチングを三位一体とした未来教育は、それら全てを包括する次世代教育のプラットフォームです。
「意志ある学び」を実現する! デジタル教科書
プロジェクト学習×ポートフォリオ×AI
鈴木敏恵 氏(未来教育デザイナー/一級建築士)
渡邉和子 氏(国際ティビィシィ小山看護専門学校副校長)
中島一美 氏(国際ティビィシィ小山看護専門学校教務科長) 所属・肩書は取材当時
現実×AI×デジタル教科書でPBL を推進
渡邉 学生に大きな変化が見られたのは、オープンキャンパスを彼らに任せた場面でした。2 年生が高校生に身体の働きを説明する際、デジタル教科書を参考にしたり、3 次元人体アプリで立体的な解剖図を示したりと、どうすれば伝わるかを学生自身が考え、看護の知識の見える化を自然な形で行っていたのです。
鈴木 それこそDX ですね、知識や学びがデジタル化されたことで、自分たちで自由自在に使いこなしています!
渡邉 はい。疑問を教科書や資料で確認しながら試行錯誤していました。デジタル教科書の検索機能も、自分たちで探りながら工夫していました。能動的に学び、他者にわかりやすく伝えようとする姿勢は、PBL とデジタル教科書がもたらした変化だと感じています。
中島 学生は日頃からデジタル教科書に触れているので、「先生、こっちの機能のほうが便利ですよ!」と私たちが教わることもあります。得意げに話す姿は、学びを自分ごとにしているサインです。
鈴木 学びが「自分ごと」になる――ここが大切です! 「意志ある学び」を実現する鍵はPBL×リアリティにあります。人の心、健康、身体への関心を持ち、現実の生活からありたい未来を描ける感性を宿すにはには、3 つのPBL「AP(アウェアネスプロジェクト)」「LP(ライフプロジェクト)」「CP(キャリアビジョンプロジェクト)」Keyword が有効です。本校でも入学直後からPBL を実施し、効果を挙げています。学生を見ていて特にいいなと感じるのは、デジタルだけでなく、模型や自分の身体といった「リアル情報」も積極的に使う点です。
渡邉 デジタルのほうが理解しやすいのか、実物を使ったほうが伝わりやすいのか。学生は目的に応じて手段を選び、自分で表現方法を考えるようになりました。
鈴木 その上でPBL の効果を押し上げるのが、70 冊を横断検索できるデジタル教科書の機能です。教科書間の知識を点でなく、領域をまたいで「線」や「面」で結び、さらには「空間」として描ける。これはデジタル教科書ならではの強みです。
中島 例えば「便秘」と検索すると、病態生理だけでなく基礎、老年、在宅、栄養など、複数領域を一望できます。初学者は一方向の理解に偏りやすいですが、横断検索は多面的な視点へと自然と導きます。また鈴木先生は、検索だけでなく、学生が日常的にAI を使っている現実を踏まえた情報収集についても指導されていますね。
鈴木 AI 活用はPBL において必須です。デジタル教科書には膨大な知識やデータが蓄積されています。その中から目的とする知識や情報を獲得するためにAI を積極的に使うことを、私は学生にしっかりと伝えます。AI を使うことで、学生は自分の調べたいことが、1 冊ではなく複数の教科書にまたがっていることにも気づきます。これは、実習・臨床での多角的思考につながります。
渡邉 鈴木先生はAI 活用だけでなく、AI の回答を必ず検証する姿勢も徹底して指導されていますね。情報の正確性や出典を確認するという、専門職として当然の姿勢を基礎教育の段階から身につけられています。
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Keyword 「人間」を大切にする3 つのPBL
LP:ライフプロジェクト (国際ティビィシィ小山看護専門学校)
AP:アウェアネス・アクションプロジェクト (東邦大学看護学部・国際保健看護学研究室・夏原和美教授) |
「意志ある学び」を実現する! デジタル教科書
プロジェクト学習×ポートフォリオ×AI
鈴木敏恵 氏(未来教育デザイナー/一級建築士)
渡邉和子 氏(国際ティビィシィ小山看護専門学校副校長)
中島一美 氏(国際ティビィシィ小山看護専門学校教務科長) 所属・肩書は取材当時
デジタル教科書で「意志ある学び」を実現しよう!
渡邉 鈴木先生のPBL では、「とにかく教科書! まずは教科書!」というメッセージを常に発信しています。学生もその意図をしっかり受け止め、実践できるようになっています。
鈴木 情報を獲得する過程こそ注意が必要で、先生は学生の振る舞いに目を向けてほしいと思います。彼らのポートフォリオの中身見て対話しましょう!ポートフォリオを見ると、ネット検索やAI で得た情報の出どころが、個人ブログや商業サイトだったというケースは少なくありません。だから私は、情報の出どころを必ず確認すること、1 つではなく多様な手段で情報を得ることを伝えます。そして何より、明確な根拠を示す教科書で必ず確認することを繰り返し伝えます。
中島 鈴木先生は学生に向かって「出典はどこ?」と何度も問いかけるので、その一言が強く印象に残り、根拠をつかみにいく意識が着実に育っています。根拠を大切にするからこそ情報源(出典)を明示する習慣が定着し、学生の思考の質も変化してきました。
鈴木 看護の現場では、デジタル化以前からエビデンスが重視されてきました。これはスキルではなく、意志であり価値観です。だからこそ、入学してすぐの1 年次からPBL を土台にして、根拠のないもので考えを組み立ててはならないという思考プロセスを身につけることが肝心です。
中島 本校ではGoogle Classroom を用いたデジタルポートフォリオを活用しています。ポートフォリオを見ると、「教科書○○ページ」といった出典が明記されています。出典がないと、教員も学生の情報源が確認できませんからね。
鈴木 そして、学生が目的に沿った情報をポートフォリオに入れているのか、ここを見る必要もあります。たとえば、便秘改善をプロジェクトにしたグループが食事の「カロリー」ばかりに注目していた場合、教師が「他には?」とコメントすると、彼らはデジタル教科書や生成AI を駆使し、自分たちで気づき、あらためて食物繊維や水分に着目していきます。デジタルポートフォリオではこうした学びの過程が見えるので、必要に応じて即座に対話コーチングができます。
渡邉 ポートフォリオは、学生の成長の見える化です。学生たちが「こんなことができるようになりました!」と自分の言葉で報告してくれる姿は、学びへの自信や誇りの表れで、モチベーション向上にも寄与しています。
鈴木 ポートフォリオやデジタル教科書は、学生の「意志ある学び」を叶えます。PBL は、課題を自ら見いだし、情報を獲得し、解決策を考えていくという現実的な学びです。そしてPBLに欠かせないのがメカニズムの理解、看護教育でいえば、疾患や病態の因果を正しく捉える意識です。先ほどのお話しで、なぜ便秘になるのかを理解しなければ、患者さんへの提案はできません。このメカニズムの理解を支える基盤が、教科書という最も安心で信頼できる知識の集合体です。ただ、紙の教科書では情報にたどり着
きにくいこともあります。その点、デジタル教科書の横断検索は威力を発揮し、学生の理解を広げ、学びの質を深めます。さらに、鮮明で詳細な画像を自由に拡大できること、色彩に意味が込められた図表・イラストを注意深く確認できることは、デジタルならではのよさです。
知識の総合体としてのデジタル教科書
新たな価値を生み出す未来の教育へ
中島 卒業後も、デジタル教科書は彼らの心強い味方になっています。臨床では、疾患や病態、薬剤や手技の確認しながら学ぶ場面が日常的にあります。そんなとき、学生時代に使い慣れた教科書にすぐ立ち返れるのは、大きな安心につながっていると思います。
渡邉 医療も教育も常に変化し続けています。教科書が改訂を重ねてきたのは変化に対して確かな根拠をもって応えてきたからであり、看護教育の確かな土台であり続けてきました。そして今、デジタル化とAI の合わせ技によって、教科書の価値は新たな次元へと広がっています。変化を恐れず、学びを止めない看護職の傍らにあるものが、これからの教科書の姿です。
鈴木 何十冊もの教科書を持ち歩くわけにはいきませんが、タブレットやPC でいつでも、どこでも確認できるデジタル教科書は、現場に出てからの大きな支えになります。まさに学び続ける人のパートナー!そしてデジタル教科書は、教師が教えるためのものではなく、学生が自らの目的のために情報を獲得するための最良で最も身近な存在です。AI 時代に求められるのは、与えられた知識をどれほど覚えられるかではなく、目の前の現実から確実な情報をつかみ取り、デジタル空間から目的に沿った根拠を得て、自分の頭で考え、新しい価値を創造していく力です。学生たちの「意志ある学び」を力強く支えるのがデジタル教科書だと、私はそう確信しています。


鈴木敏恵 氏(未来教育デザイナー/一級建築士)
一級建築士としてインテリジェントスクールを設計し、日本の教育情報化を先導してきた次世代教育クリエーター。建築家としての「未来を構想し形にする」思考を教育に展開し、PBL・ポートフォリオ・対話コーチングを統合した「意志ある学び─未来教育」を全国で推進。AI時代に不可欠な学習観の転換を提唱し、看護教育DXの実践と支援にも尽力する。未来を見据えたビジョン構築と学びのデザインの第一人者。

国際ティビィシィ小山看護専門学校は、少人数教育、PBL、デジタルツール活用を柱に、「意志ある学び」を育む看護専門学校。OSCE 実践に加え、医療現場の変化を先取りした電子カルテを用いた授業、アクティブラーニングを積極的に導入。学生は多様なバックグラウンドを持ちながら、自らの目標を明確にし、学年を越えた交流の中で豊かな人間関係を築く。学生は「何のために看護を学ぶのか」「どう実践するのか」を問い、ストレングスを生かしながら確かな看護実践力を身につけている。




