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精神看護学領域における教育実践

現代版『オレム-アンダーウッドセルフケア理論』活用ガイド《1》紹介編

  • 資料あり
  • レクチャー
  • 2024/04/22 掲載
舩山 健二

講義・演習・実習におけるオレム-アンダーウッドセルフケア理論の活用

舩山健二(ふなやま・けんじ)
著者紹介
舩山健二(ふなやま・けんじ)
新潟県立看護大学 地域生活看護学領域 精神看護学・講師。北里大学病院に病棟看護師として5年間勤務。その後、刑務所で看護師として7年半勤務し、民間精神科病院の閉鎖病棟勤務を経て、2019年 4月に新潟県立看護大学へ精神看護学の教員として着任。臨床時代、ずっと感染管理に従事していました。病原微生物や “こころ”といった目に見えないものを好みます。現在は、学生たちに囲まれながら、声なき世界に誘われ、臨床法医学専門員の勉強中です。日本版性暴力対応看護師(SANE-J)。

文献が……ない !?

 多くの精神科の看護現場で「オレム-アンダーウッド看護理論」が用いられています。そのため、教員である筆者も看護基礎教育の場で、この理論の活用について学生に伝えています。

 ただ、その際に苦労しているのが、日本にこの理論が導入された頃の文献はすでに絶版となり、「学生がアクセスしやすいものがない!」ことです。精神看護学の教科書で触れられていることもありますが、実習において、学生自身が理論を活用できるレベルまで学んでもらうには、物足りなさがありました。地域での暮らしを見据えた看護が求められている時代に、古典的な文献だけでは、SNSによる影響やメンタル不調のある方の妊娠・出産・育児に関する記載がなく、伝えにくさを感じていました。

 そこで筆者は「アセスメントガイド」を作成し、演習や実習の際に用いてきました。このたび、新年度の演習・実習に向けて内容をブラッシュアップし、現代版『オレム-アンダーウッドセルフケア理論』活用ガイドを準備しましたので、ご紹介します。看護学生のみなさんに広く活用いただけましたら嬉しく思います。

 

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活用ガイド作成にあたって

 まず、古典的な文献を入手し、理論の核心部分を明示しながら現代に必要な視点を加筆しました。そして、直近5年間の精神看護学演習・実習における筆者の指導を振り返り、学生に伝えた頻度が高かった内容の記載に努めました。しかし、結果は、筆者が伝えたことよりも「学生が気づき・着眼した」内容のほうが多くなりました。また、活用ガイドを身近に感じてもらえるよう、学生にイラストを描いてもらいました。

 「活用ガイド」に患者さんを当てはめるのではなく、1つの手がかりや道しるべとしながら、患者さんとの関わりのなかから得た自らの“気づき”や“着眼点”を大切に、あなた自身の看護を育まれることを期待します。

 

筆者が使用している精神看護学演習・実習の記録様式

 ちなみに、現在筆者が精神看護学演習・実習の際に使用している記録様式は、以下の通りです(これらは、いずれも臨床における使用を目的としたものではなく、あくまでも学生の思考過程を育むことを目的として準備したものです)

  • 様式1-①:基本データとして、精神科診断名、身体合併症、入院形態、家族歴、生育歴、病歴経過の記述とともに発病前~現在までの経過を1本の線上に記載します。また、社会生活機能レベルについて発病前と発病後それぞれの最高レベルを記載します。さらに、現在の治療方針(入院目的)、治療内容、社会資源の活用状況を整理します。食物・薬品・その他のアレルギーや感染症があれば特記します。
  • 様式1-②:薬物療法の整理として、患者が使用している薬剤について、①商品名・剤型・1回用量・1日あたりの使用回数・使用時間について書き出します。②向精神薬については、その患者さんに処方されている処方の目的を記載します。③向精神薬の種類(例:多元受容体標的抗精神病薬:MARTA)を記載し、④とくに注意を払い、看護観察を行う副作用のみを記載します。⑤薬物血中濃度測定が必要な薬剤か否か、必要な場合には中毒域・治療域を併記します。また、必要時にはクロルプロマジン換算を行います。
  • 様式2:オレム-アンダーウッドセルフケア理論に基づくセルフケアの状態把握とケアレベルの査定を行います。
  • 様式3-①:全体像として、A3版1枚の用紙に患者の希望を出発点としたストレングスモデルの視点を記載し、BPSモデル〔バイオ(生物・身体的)-サイコ(心理的)-ソーシャル(社会的)〕を用いて情報を整理します。アセスメントを記載し、「私が捉えた患者のリカバリー」と「看護の方向性」を記載します。

 

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  • 様式3-②:患者のリカバリーに向けた多職種連携と(他職種に何をお願いしたいかリスト)、患者のリカバリーに向けて活用したい社会資源について記載します。

 

演習・実習に役立つ文献リスト

精神看護学演習や実習の際に学生へ紹介している主な書籍は、以下の通りです。皆さんも、ぜひご覧になってみてください。

 

(1)精神看護における看護過程の全体を概観できる文献

  • 萱間真美(2021)ストレングスからみた精神看護過程 +全体関連図,ストレングス・マッピングシート,医学書院.
  • 吉川隆博,木戸芳史(2021)看護判断のための気づきとアセスメント 精神看護,中央法規出版.
  • 木戸芳史(2023)クライエントとともに創るコプロダクション型精神看護過程―基礎知識・事例&計画シートで実践に活かす,中央法規出版.

(2)ストレングスモデル活用に関する文献

  • 萱間真美(2016)リカバリー・退院支援・地域連携のためのストレングスモデル実践活用術,医学書院.

(3)薬物療法の整理・理解に役立つ文献

  • 村井俊哉(2022)精神科の薬―抗精神病薬・抗うつ薬・睡眠薬・抗認知症薬…―はや調べノート;これだけは押さえておきたい改訂2版,メディカ出版.

(4)精神状態の査定(MSE:mental status examination)に役立つ文献 

  • 武藤教志 編著(2021)他科に誇れる精神科看護の専門技術 メンタル ステータス イグザミネーションVol.1第2版.精神看護出版.
  • 武藤教志 編著(2021)他科に誇れる精神科看護の専門技術 メンタル ステータス イグザミネーションVol.2第2版.精神看護出版.

(5)セルフモニタリングやクライシスプランについて知る文献

  • 狩野俊介,野村照幸編著(2024) 危機がチャンスに変わる クライシス・プラン入門―精神医療・保健・福祉実践で明日から使える協働プラン,中央法規出版.

 

▶▶次回《2》では、学習ドリルをご紹介します。

 

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