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動画で学ぶ! 分娩第2期の助産技術

腟壁の用手誘導

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  • #無痛分娩
  • #助産技術
  • 2026/01/13 掲載
田辺けい子
田辺けい子
著者紹介
田辺けい子
1992年に東京大学医学部附属助産婦学校卒業後,恩賜財団母子愛育会愛育病院、草加市立病院などで勤務。2006年に「〈出産の痛み〉の民族誌 〜無痛分娩が普及しない背景の分析〜」でお茶の水女子大学大学院人間文化研究科 修士(人文科学)。2008年神奈川県立保健福祉大学看護学科講師,2013年北里大学大学院看護学研究科 博士(看護学),2018年より現職。現在,産科麻酔科医・産科医・助産師三者の目線から無痛分娩の学びを提供するコミュニティ「飛ぶ無痛Café」をInstagramやLINEで提供中。

●飛ぶ無痛Café https://tobumutsucafe.com/

【シリーズ】 

動画で学ぶ! 分娩第2期の助産技術 第2回 

胎児下降を助ける「スペースづくり」の技術 

腟壁の用手誘導は,分娩第2期に児頭の下降が思うように進まないときに行う手技です。産道に胎児が通過するための「スペース」をつくり,進行を助けます。 

下降が進まない原因は,娩出力や胎児の回旋の問題ではなく,骨盤底筋や腟壁の緊張にある場合もあります。陣痛の間欠時に児頭が押し戻されたり,努責をかけてもstationが変わらなかったりします (臍帯巻絡や臍帯が短い場合にも生じることがあります)。そのようなとき,助産師が腟壁を圧排して産道に空間をつくることで,腟壁の抵抗が減り,児頭は子宮収縮の力に身を任せるように自然に下降しやすくなります。さらに児頭が下降することで,産婦のいきみ感覚が引き出されることにもつながります。 

 

科学的根拠と今回紹介する意図 

この技術の有効性については,現時点で十分な科学的根拠がありません。研究として体系的に検証された知見が少なく,標準化された方法や手順,留意点についての統一された見解は確立されていません。ただし,一部の文献で紹介されており1),2),臨床の現場でしばしば行われています。根拠が十分でない以上,積極的に推奨するものではありませんが,今回はあえて紹介することにしました。助産師が実践の引き出しを増やす一助として,知っておく価値のある技術と考えました。 

 

 

手技の概要 

連載第1回目に引き続き,技術を身につけているフランスのオーレリー・ドルーアン=アビナル助産師に協力していただき,コツや手順を動画にまとめましたのでご覧ください。 

 

 

通常は,児頭の進行方向に沿って示指・中指で腟壁を圧排し(球海綿体筋に特化して行います),下降の軌道を導きます。子宮収縮や努責のタイミングに合わせ,子宮収縮とともに下降をガイドします。操作は1回ないしは2回までにとどめます。必要に応じて修正リトゲン手技(本連載第1回)を併用し自然な娩出へとつなげます。助産師の指の動きをなめらかにしたり,児頭の滑りをうながすために,潤滑油を使用してもよいでしょう。 

 

おわりに:非愛護的な操作はすべてを台無しにします 

腟壁の用手誘導は,乱暴に行えば腟粘膜損傷や会陰裂傷,腟壁・外陰部血腫を起こすおそれがあり,何より,女性の出産体験を台無しにします。腟内の感触や,児頭の屈曲・回旋の状態を丁寧に読み取り,産婦の呼吸に合わせて行うことが大切です。産婦への十分な説明と疼痛への配慮は言うまでもなく,大前提です。どんなに技術的に巧みでも,非愛護的な操作は助産の本質から外れます。助産師の「手」は,産婦と児を支え,安心を伝えるためのもの——その原点を忘れずにいたいものです。 

 

 

 

謝辞 

腟壁の用手誘導の映像化にあたって、多大なご協力を賜りましたAurélie DELOUANE-ABINAL助産師( Sage-femme MSc. Spécialiste clinique aux HUG, Chargée de cours à la HEdS, Switzerland)に心より御礼申し上げます。 
3Dアニメーション動画は2024年度放送大学教育振興会助成事業の支援により作成されました。

文献 

1)中根直子(編著):改訂2版 Perinatal Care Notes 分娩介助(周産期手帳2), p.74 メディカ出版, 2012. 

2)田辺けい子:無痛分娩パーフェクトガイド.p.116 メディカ出版2023. 

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